2022 Fiscal Year Research-status Report
ATP遊離リズムを新規指標とした生物時計の振動子の決定および機能部位の解析
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21K06117
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
武藤 梨沙 東邦大学, 理学部, 講師 (10622417)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生物時計 / 藍色細菌 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアの生物時計分子装置は、時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCの3つから構成されている。これらのタンパク質を試験管内で混合すると、ATP存在下で約24時間周期でKaiCのリン酸化レベルやATPase活性が変動する。これらは、KaiA、KaiB、KaiCの3つが揃わないと観測されない現象のため、KaiABCが時計の最小単位であると考えられる。しかし、私たちは、2021年に、KaiC単独で、KaiCに結合したATPの遊離に振動があることを示した(Mutoh et al., 2021)。これは、KaiAやKaiBがなくてもKaiC単独で振動機能を有することを示している。そこで、本研究では、KaiCが時計の振動子であることを示し、ATP遊離のリズムと時計の関連性を明らかにする。 これまでに、KaiCに変異を入れると様々な周期変異体(長周期、短周期、無周期、アリズミックなど)が発見されている(Ishiura et al., 1998)。これらの周期変異体を用いて、ATP遊離リズムと周期変異体に相関があるのか否かを調べた。その結果、ATP遊離の周期(遊離する時間帯)とin vivoで観測される周期には直接的な相関はなさそうであった。in vivoでは、kaiCだけではなく、kaiAやkaiB、さらには時計関連タンパク質が関わってリズムを生み出している。kaiCに変異が入ることで周期に異常が出るのは明らかであるが、その周期を決定する機構は、KaiCではなくその下流にあるのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周期変異体の作製、精製は問題なく、ATP遊離測定まで行うことができた。当初、in vivoで示す周期とATP遊離の周期は相関があると予測していた。しかし、結果は予測とは異なっていた。現在は、この再現性をとること、さらに周期変異体の種類を増やして相関の有無を明らかにすることを目指して実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から、in vivoで示す周期と、ATP遊離での周期には相関がなさそうであった。しかしながら、測定条件(温度、タンパク質濃度など)や解析方法をもう少し検討することで、異なった結果が得られる可能性もある。そのため、まずは、本当に相関がないのかを明らかにし、相関がないのであれば、どの過程で周期を決定しているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、ATP遊離測定の実験に専念した。そのため、NMR試薬などの高額試薬を購入する量が例年よりも少なかった。 次年度は、NMR測定を行うため、試料作製のための安定同位体標識された試薬の購入を予定している.
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