2023 Fiscal Year Annual Research Report
Toll様受容体シグナルが促進する脱分化誘導因子のエピジェネティックな発現制御
Project/Area Number |
21K06121
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
板東 哲哉 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (60423422)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | コオロギ / 再生 / 再生芽細胞 / マクロファージ / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
フタホシコオロギの後脚を脛節で切断すると、創傷部位が瘡蓋に覆われ、創傷部位周辺にToll受容体やスカベンジャー受容体Crqを発現する昆虫マクロファージ(プラズマ細胞)が遊走する。プラズマ細胞を枯渇させると脚再生が阻害されたことから、プラズマ細胞のどのような機能が再生に重要かを解明する目的で、ROSを産生するDuoxの機能解析を行った。Duox(RANi)個体では、再生脚の先端が肥大し、脱皮が阻害されて個体サイズが小さいまま幼虫致死となった。抗4-HNE抗体で染色すると、コントロール個体と比較してDuox(RNAi)個体では脂質過酸化物4-HNEが減少していた。また、細胞増殖をコントロール個体と比較すると、Duox(RNAi)では脚切断後2日目(2dpa)で細胞増殖が亢進し、5dpaでは減少していた。再生脚を切片化してヘマトキシリン・エオシン染色を行ったところ、Duox(RNAi)個体では5dpaに血球が再生脚に過剰に遊走して肥大していた。血球マーカー遺伝子などの発現を調べたところ、フェノールオキシダーゼやToll受容体の発現が増加しており、エノシトイドやプラズマ細胞が増加していると考えられた。さらに未分化細胞に発現するnanosも増加しており、未分化の幹細胞も増加していると考えられた。再生脚への血球の遊走には、プラズマ細胞が産生するサイトカインが関係すると考え、Toll受容体のリガンドSpzについて発現解析を行ったところ、Duox(RNAi)個体ではSpz2の発現が増加、Spz3とSpz6の発現が減少し、spzとneurotrophin1の発現は変化がなかった。これらの結果から、Duoxにより産生されるROSが、脚再生過程における血球遊走や細胞増殖を制御することが明らかとなった。今後は細胞増殖を制御する機構の解明を進めたい。
|