2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06123
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菊池 裕 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (20286438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 治子 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (70775767)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / Dnmt3a / 転写終結 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAメチル化は転写開始・伸長を制御しているが、転写終結位置における機能は不明なままである。私達は、Dnmt3a欠損変異体(ゼブラフィッシュ・マウス胎児線維芽細胞MEF・神経細胞)を用いて直接の標的であるゲノム領域の解析を行った結果、タンパク質コード遺伝子(PCG)のTranscription termination site(TTS)が低メチル化しており、転写終結異常(読み通し転写)が起こっている可能性を世界で初めて見出すことに成功した。しかし、未だDNA低メチル化により読み通し転写が起こる機構や、ヒストン修飾との関連性に関しては全く明らかにされていない。そこで本研究課題では、脊椎動物に共通した、転写終結位置の制御におけるDNAメチル化の機能解明を研究目的としている。 本年度は、マウスDnmt3aノックアウトMEF及び神経細胞において、Whole genome bisulfate sequencing (WGBS)及びMethylated DNA ImmunoPrecipitation (MeDIP)と網羅的遺伝子発現解析RNA-seqのデータセットを用いて、転写終結異常(読み通し転写)に関して詳細なデータ解析を行った。その結果、特定のDnmt3aノックアウト神経細胞とMEFにおいて、それぞれ有意に読み通し転写の増加と減少が起こっている事を見出した。更に、Dnmt3aノックアウト神経細胞においては、下流の遺伝子やゲノム領域とのキメラ転写産物が有意に増加している事を明らかにした。 以上の結果より、マウスDnmt3aノックアウト細胞を用いて、転写終結位置の制御におけるDNAメチル化の機能解明を行った結果、細胞種やDnmt3の種類に依存して転写終結異常が起こる事を、世界で初めて論文報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、マウスDnmt3aノックアウト細胞のデータセットを用いて、転写終結異常(読み通し転写)の解析を行い、細胞種やDnmt3の種類に依存して転写終結異常が起こる事を明らかにする事に成功した。本研究成果は、世界で初めての論文報告であり、本研究の最初の目的を達成する事が出来たと言える。また、本研究の第二目標である転写終結機構の解明に向けて、実験・解析を更に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第二目標である転写終結機構の解明に向けて、以下の実験・解析を計画している。 (1)当初の研究計画に示した様に、ヒストン修飾の異常に関して調べる事を計画している。 DNAメチル化とヒストン修飾とは、互いに密接な関連性がある事が知られている。現在までの研究により、転写中のRNA pol Ⅱに結合したヒストンメチル基転移酵素SET Domain Containing 2 (Setd2)及びdisrupter of telomere silencing 1-like (Dot1l)は、それぞれ転写依存的にgene bodyにヒストン修飾(H3K36me3, H3K79me2/3)を集積させるが、TTSではこれらヒストン修飾が減少する事が報告されている。一方、Dnmt3a欠損変異体では読み通し転写が起こっているため、2つのヒストン修飾はTTSにおいて高い事が予想される。この仮説を検証するため、読み通し転写が観察されたタンパク質コード遺伝子に関して、TTSのH3K36me3, H3K79me2/3修飾を既存のデータセットを用いたバイオインフォマティクス解析、或いはChIP-qPCR実験により調べる。 (2)染色体の三次元構造変化は、遺伝子発現に重要である。特に立体構造の変化によるエンハンサーとプロモーターとの相互作用は、遺伝子発現を決める重要な要因の一つである事が知られている。最近、細胞がストレスを受けると、転写終結異常により、読み通し転写が起こる事が報告されている。この様なストレスを受けた細胞では、染色体の三次元構造変化が起こる事も知られているので、両者の関連性に関して、解析を行う予定である。染色体のTAD(topologically associating domain)の変化に着目し、最初にデータ解析によって、読み通し転写とTADの変化との相関関係を調べる予定である。
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Research Products
(6 results)