2021 Fiscal Year Research-status Report
難培養真菌のミニメタゲノム解析法の確立と新規遺伝子の探索
Project/Area Number |
21K06141
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
梅山 大地 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (30706370)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 真菌叢の分離 / メタゲノム解析 / 蛍光ラベル / 溶菌酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
真菌の細胞壁を構成する分子に結合するドメインと蛍光蛋白質を融合したプローブを複数作製し、真菌との親和性の向上を目指して改良を行った。これらのプローブを磁性ビーズに固定し、ヒトの腸内微生物叢から真菌叢の磁気分離を試みた。磁気分離前後の細菌と真菌の含量をqPCRで定量したところ、真菌叢が濃縮されていることを確認した。次に分裂酵母をモデルに用いて分離条件の最適化に取り組んだ。磁気ビーズ上に固定化したプローブと分裂酵母をインキュベートし蛍光顕微鏡観察を行ったところ、ビーズと結合していない細胞から蛍光シグナルが観察され、プローブが磁気ビーズから解離していると考えられた。そこでプローブと磁気ビーズを共有結合で固定したところ、磁気ビーズとプローブの解離を防ぐことができた。 FACSソーティングによるヒト腸内微生物叢からの真菌叢の濃縮法を検討した。細菌と真菌の平均的な大きさやゲノムサイズに加えて、本研究で作製したプローブを用いた真菌の蛍光ラベルおよび細胞表面に存在するキチンの染色を組み合わせることで、真菌叢から細胞壁の分子組成が異なる集団ごとに分離濃縮する手法の開発に取り組んだ。 密度勾配遠心による細菌叢と真菌叢の分離条件を検討した。3種類の密度勾配担体を用いてそれぞれ10層の不連続密度勾配を作製し、ヒトの腸内微生物叢の密度勾配遠心を行い、細菌と真菌の含量をqPCRで定量した。その結果、全ての担体で細菌と真菌は異なる層に濃縮され、2種類の担体では真菌含量のピークが中程度の密度の層から検出された。 細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを分解する酵素を複数クローニングし、細菌特異的に溶菌活性を示す酵素の取得を試みた。ヒトの腸内微生物叢とこれらの酵素をインキュベートし、上清に遊離した細菌及び真菌にそれぞれ特異的に存在するDNA領域をqPCRで定量し、複数の酵素で真菌特異的な溶菌活性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真菌の細胞壁を構成するα-グルカン、β-グルカンおよびマンナンと結合するドメインと蛍光蛋白質を融合したプローブの作製を行ったが、当初マンナンと結合するプローブは、結合がみられなかった。しかしシャペロン融合たんぱく質として発現することでα-グルカンやβ-グルカンのプローブと同程度の結合能を示すプローブを得ることができた。また、ドメインをタンデムに連結したプローブを作製し、ドメイン間やドメインと蛍光蛋白質結ぶGSリンカーの長さを調整することで、飛躍的に親和性が向上した改良型プローブを作製することができた。これらのプローブをFACSソーティングに利用することで分離能の向上が期待でき、また磁気分離に利用することで回収率の向上が期待できる。磁気分離の条件検討を行うため、プローブを固定化した磁性ビーズと分裂酵母を混合し蛍光顕微鏡観察を行ったところ、プローブと細胞の複合体がビーズから解離していることが観察された。そこで、プローブと磁気ビーズを共有結合で固定するように改良したところ、磁気ビーズとプローブの解離がみられなくなり、磁気分離の条件検討を進めることが可能となった。 細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを分解する酵素のクローニングを行い、これまでに10種類の酵素についてヒトの腸内微生物叢から細菌特異的な溶菌活性の評価に取り組んだ。これらの酵素をヒトの腸内微生物叢と混合し、細菌及び真菌に対する溶菌活性を溶出した細菌由来DNAと真菌由来DNAのqPCRによる定量で評価したところ、8種類は細菌に対する溶菌活性がほぼ認められなかったものの、2種類は細菌に対して溶菌活性を示し、真菌への活性はほぼ認められなかった。これらの酵素の反応条件の最適化を行い、複数の酵素を組み合わせて用いることで、微生物叢から酵素処理により細菌を取り除く手法の効率化に取り組むことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
真菌の蛍光プローブの改良を継続し、結合ドメインをトライマーやテトラマーにすることでさらなる親和性の向上を目指す。これまでに検討してきた密度勾配遠心法と細菌特異的な溶菌手法を組み合わせて微生物叢から真菌叢を濃縮するための前処理法を確立し、磁気分離やFACSソーティングによる真菌叢の分離に取り組む。FACSソーティングでは細菌と真菌の平均的な細胞の大きさやゲノムサイズが異なることから、前方散乱やインターカレーターの結合量の違いを利用することで、微生物叢から真菌叢の分離濃縮が可能であるが、本研究ではこれに改良型のプローブを組み合わせることで、真菌叢を高純度に分離するだけでなく、真菌叢に含まれる多様な真菌種の中から細胞壁の分子組成が近い集団ごとにプールして単純化した真菌叢のミニメタゲノム解析を行う。これにより細胞数の多い真菌種のゲノムをシーケンスデータから排除してマイナー真菌のゲノム解析を行う。
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