2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞のリプログラミングによるDNAメチル化変化を利用した遺伝子発現制御の理解
Project/Area Number |
21K06143
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
岡村 浩司 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 室長 (80456194)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リプログラミング / DNAメチル化 / 遺伝子発現 / ヒストンメチル化 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
高等真核生物の個体にはいくつもの器官や組織、さまざまな細胞が存在し、それぞれにおいて異なる遺伝子の発現制御がなされている。本課題の目標は多くの遺伝子について、それぞれの発現に関わるDNAメチル化サイトを同定することで、まず、ヒト子宮内膜由来細胞およびそのiPS細胞株との比較解析から、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)遺伝子群について結果が得られた。MMPはコラーゲンなど細胞外マトリックスを分解する酵素で、月経における剥離、脱落にも関与し、子宮内膜間質細胞においてはMMP1やMMP2の高発現が見られる。この細胞を親株としてリプログラミングによりiPS細胞株を樹立させると、幹細胞においては不要である上記2遺伝子のmRNA発現量は1/10以下に抑制される。メチル化アレイによるデータから、MMP1についてはプロモータ領域の一サイトが重要であることを示すことができた。MMP2についてはgene bodyの離散的な数ヶ所の高メチル化が観察され、またCpGアイランドとなっているプロモータ領域ではH3K4me3修飾が細胞のリプログラミングにより消失することが確認された。また、MMP20については子宮における機能と関わりがないためか発現しておらず、iPS細胞でもオフのままであるが顕著な高メチル化を受けていることが分かった。MMP20に関する制御情報を得るためには、子宮内膜とは別のMMP20が発現している細胞をリプログラミングする必要がある。MMP1を含むMMPファミリー9遺伝子は11q22で同じ向きに遺伝子クラスタを形成しており、Hi-Cによるデータからその中にクロマチン境界を確認、メチル化が変化する遺伝子座とそうでない遺伝子座の区分けが行われる機構の示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜由来の細胞株Edom22、およびそのiPS細胞株について、マイクロアレイを利用した遺伝子発現解析、およびDNAメチル化解析を行ったところ、リプログラミングによる高メチル化でiPS細胞での発現量が10分の1以下となる遺伝子座を12同定することができた。その中にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)をコードするMMP1、MMP3、およびMMP12が含まれていたことからこの遺伝子ファミリーに特に着目して解析を進めた。これら3遺伝子は月経に深く関わると予想され、さらに発現量が10分の1以下とはならなかったものの、iPS細胞株で同様に発現が抑えられている遺伝子としてMMP2を確認することもできた。プロモータ領域の構成の違い、またヒストン修飾の解析も行うことができ、染色体上でクラスタを成すこれらの遺伝子が、位置に依存して異なる発現制御を受ける可能性が示され、今後の研究方針を明確にすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのDNAメチル化解析は遺伝子発現同様、マイクロアレイを利用したハイブリダイゼーションによるデータを利用してきた。安価に結果を得られる一方で、プロモータ領域以外のプローブについては密に用意されているわけでななく、例えばMMP2についてはgene bodyの離散的な数ヶ所の高メチル化が観察され、発現抑制に強く関わっている可能性が示されたものの、DNAメチル化がどの程度の広がりをもって変化したかを把握することができていない。そこで次の段階としては、バイサルファイト処理後のゲノム断片からライブラリを作成し、次世代シークエンサによるシークエンシングの手法を用いて、より高解像度な解析を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度中、2022年になってから依頼したライブラリ作製および全ゲノムシークエンシング解析の納品が2022年5月になってしまい、2021年度に計上されなかったためであるが、基金であったため研究自体は年度の区切りを気にせずに進めることができた。
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Remarks |
多数サンプルのDNAメチル化データを訓練することにより構築された線形分類モデルにより幹細胞および体細胞を判別
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Research Products
(9 results)