2021 Fiscal Year Research-status Report
Physiological roles of cross-talk between fatty acid elongation and Ca2+
Project/Area Number |
21K06153
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 安則 東北大学, 生命科学研究科, 学術研究員 (80793603)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 脂肪酸伸長酵素 / カルシウムポンプ / カルシウムシグナル / タンパク質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸は生命に不可欠の有機化合物であり、膜脂質の構成因子として生体膜の機能を制御する。脂肪酸の機能は、その炭素鎖の長さによって規定される。この「長さ」の多様性を産み出すのが炭素鎖を伸ばす酵素 (脂肪酸伸長酵素) である。脂肪酸伸長酵素自体の解析が進む一方で、これらの酵素が他の細胞内プロセスとどのように協調し、細胞機能を制御するか、という点については不明な点が多い。申請者は、脂肪酸伸長酵素の一つTER (trans-enoyl CoA reductase) が小胞体内腔にCa2+を取り込むポンプであるSERCA2bと結合し、その活性を阻害するという結果を得た。本研究はこの結果を土台に、脂肪酸伸長とCa2+のクロストークを分子レベルで解明し、その意義を明らかにすることを目指す。
本年度は、小胞体内腔のCa2+量を蛍光タンパク質プローブ (G-CEPIA1er) を用いてプレートリーダーで定量する実験系を構築した。この系を利用して、TERの発現抑制により、小胞体内腔のCa2+量が増加することを見出した。この結果から、TERがSERCA2bを阻害することで、小胞体内腔のCa2+量を減少させると考えられる。また、TERとSERCA2bの結合様式についても検討を進めた。TERのSERCA2b結合領域にGSTを融合した組換えタンパク質を用いてプルダウン実験を行い、TERと結合するSERCA2bの領域を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、TERが小胞体内腔のCa2+量を減少させることを、蛍光タンパク質プローブを用いて示すことができた。この結果から、小胞体内腔のCa2+が制御する種々のシグナル伝達経路にTERが関与する可能性が高いと考えており、今後検討を進める。また、TERと結合するSERCA2bの領域を見出すことができた。この知見をもとに、SERCA2bとの結合がTERの酵素活性に影響を及ぼすか、生化学的な解析を行う予定である。以上のように今後の研究の土台となる成果を得ていることから、順調に研究が進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) SERCA2b・Ca2+による脂肪酸伸長酵素の制御 SERCA2bの過剰発現、発現抑制や阻害剤 (Thapsigargin) 処理を行い、細胞内の各脂肪酸量を質量分析により定量する。また、ミクロソーム膜を酵素源とした脂肪酸伸長アッセイを行う。次に制御機構を確定させるため、リポソームを用いた再構成実験を行う。脂肪酸伸長酵素、SERCA2bの組換えタンパク質をリポソームに埋め込み、SERCA2bの有無やCa2+濃度の変化で脂肪酸伸長反応に影響が出るか検討する。
2) 脂肪酸伸長酵素とCa2+のクロストークの生理的意義 脂肪酸伸長や小胞体Ca2+が制御する生理現象である、「表皮角化細胞の分化」及び「免疫シグナル伝達」に注目した解析を行う。まず市販のヒト表皮角化細胞を利用し、培地中のCa2+濃度を上げることで分化を誘導する。レンチウイルスベクターを用いてTER, SERCA2bを発現抑制し、角化細胞の分化や脂肪酸量に及ぼす影響を解析する。免疫シグナルについては、外来抗原を受容するT細胞受容体 (TCR) や、ウイルスDNAにより活性化するSTINGといった免疫シグナル分子に着目する。TCR、STINGを内在的に発現するヒトT細胞株 (Jurkat)、マウス線維芽細胞 (MEF) を用い、TERやSERCA2bの発現抑制またはノックアウトを行う。この条件下で、TCRやSTINGが活性化する膜ドメインが変化するか、そして下流のシグナル伝達分子のリン酸化に異常が生じるか、検討を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度以降に多くの物品を購入すること、学会で成果発表を行うことを予定しているため、当初の計画より多くの金額を次年度使用額とさせていただきました。具体的な物品としては、シグナル伝達解析に使用する培養細胞や抗体、リポソーム再構成実験に利用する脂質などを購入する計画です。
|
Research Products
(1 results)