2021 Fiscal Year Research-status Report
オーファン受容体Adgrf5による糸球体濾過障壁の恒常性維持機構の解明
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21K06167
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 信大 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (80361765)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GPCR / 血管内皮 / 腎臓 / 糸球体 |
Outline of Annual Research Achievements |
①糸球体血管内皮細胞におけるADGRF5の細胞内シグナル伝達機構について明らかにするため、正常およびADGRF5ノックアウトマウス(以後、KOマウスと呼ぶ)から単離した糸球体および糸球体血管内皮細胞におけるKLF2、KLF4、eNOSの遺伝子発現量について定量PCR解析を行った。その結果、いずれの場合においても遺伝子発現量がKOマウスで上昇することを認めた。タンパク質レベルでもeNOSの発現量増加は確認できたが、eNOSのリン酸化レベルは変化が認められなかった。このことから、KOマウスではKLF2/4を発現誘導するシグナル経路が活性化していることが示唆された。またKOマウスではeNOSのリン酸化レベルが低下し、それを補うためにKLF2/4を介してeNOSの発現を上昇している可能性も考えられる。 ②KOマウスの糸球体濾過機能異常のメカニズムを解明するために、血管内皮細胞表面に局在しタンパク質透過性を制御する分子の遺伝子発現について解析した。その結果、KOマウスにおけるグリコカリックス成分の遺伝子の発現量が顕著に減少していることを確認した。グリコカリックスの異常はタンパク尿を引き起こすことが報告されていることから、グリコカリックス成分の発現低下がのKOマウスにおけるタンパク尿の発症に寄与する可能性が示唆された。 ③ADGRF5のリガンドとして新規ホルモン分子であるFNDC4を同定した。FNDC4は肝臓から分泌され、脂肪細胞のADGRF5に作用することでインスリン感受性を上昇させる効果があることを明らかにした。また、脂肪細胞においてFNDC4はADGRF5依存的に細胞内cAMP濃度の上昇を引き起こすことを認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ADGRF5ノックアウトマウスにおける細胞内シグナル伝達分子や糸球体濾過機能制御分子の遺伝子およびタンパク質発現の解析に予定より時間がかかったこと、また、コロナ過による出校制限による動物実験の進捗に遅れが生じた。しかしながら、ADGRF5のリガンドとしてFNDC4を同定し、FNDC4の生理機能を明らかにできたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
ADGRF5ノックアウトマウスにおけるeNOSの発現変動は血管生理に影響を及ぼす可能性が考えられる。したがって当初計画にあるNOやROSの産生量に変動がないかを解析する。また、上流シグナルとして流れ刺激が関与するかについても解析を行う。さらにリガンドとして同定したFNDC4が本研究で明らかにしたい糸球体血管機能に関与するかについてはまだ不明である。当初研究計画であったADGRF5の流れ刺激応答の有無に加えてFNDC4が糸球体血管内皮細胞で応答するかについても解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
機器(遠心機)の修理が必要であったが年度末の会計処理の締め切り間近であったため、翌年度に修理と支払いを行う計画にした。
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