2023 Fiscal Year Research-status Report
オーファン受容体Adgrf5による糸球体濾過障壁の恒常性維持機構の解明
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21K06167
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 信大 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (80361765)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | GPCR / 血管内皮細胞 / 腎臓 / 糸球体 / 細胞内情報伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まず、ADGRF5のシグナリング経路と特定とADGRF5の影響下にある遺伝子の同定を行った。ADGRF5の部分配列の合成ペプチドを用いて、ADGRF5安定発現HEK293細胞株、ヒト初代糸球体血管内皮細胞、マウス肺血管内皮細胞を処理したところ、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を検出した。ADGRF5欠損マウス由来の細胞ではこの細胞内カルシウムイオン上昇は認められなかった。したがって、ADGRF5は血管内皮細胞ではカルシウムシグナル応答をすることが示された。ADGRF5ノックアウトマウス由来の血管内皮細胞及び、ADGRF5をノックダウンした初代血管内皮細胞では転写因子KLF2の遺伝子発現が上昇することを明らかにし、ADGRF5が血管機能に重要な役割を担うKLF2の発現制御に関与していることが示唆された。次に、ADGRF5欠損マウスの腎臓切片の染色実験および電顕解析を行い、糸球体血管内皮細胞のグリコカックスの量が低下していることを認め、すでに明らかにしている腎機能低下の原因の一部を担っている可能性が示唆された。さらに、ADGRF5欠損マウスの糸球体における一酸化窒素産生量について解析したところ、一酸化窒素の量が野生型マウスに比較してADGRF5欠損マウスで減少していることを認めた。KLF2が発現上昇している条件ではあるが、一酸化窒素量が減少しており血管機能に異常が起こっていることを示す新たなデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADGRF5のシグナル経路の特定、影響下にある遺伝子の同定、ADGRF5欠損の糸球体血管内細胞の新たな異常の発見を行うことができ、糸球体濾過障壁の恒常性維持におけるADGRF5の重要性について示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞のADGRF5がどのようなメカニズムで活性化されるのかを明らかにすることが重要だと考えている。ADGRF5は接着型GPCRファミリーに属しているが、他の接着型GPCRファミリー分子の中にはshear stressやストレッチ刺激などの力学的刺激によって活性化して細胞応答を引き起こすことが報告されている。ADGRF5は血管内腔表面に局在していることから、血流刺激などによって活性化される可能性が考えられる。今後は、力学的刺激とADGRF5の活性化との関係性の有無について明らかにする解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
現在、本研究課題の研究成果を論文投稿中であり、追加実験のための費用に充てる予定である。
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