2022 Fiscal Year Research-status Report
エンドサイトーシスを引き起こす内在性分子群の多色超解像マップの作成
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21K06168
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木内 泰 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70443984)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超解像イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞底面のクラスリン被覆部位では、Clathrin heavy chainやClathrin light chain、AP2 complex、FCHo1/2、Eps15、ITSNといったタンパク質によって構造が形成・維持され、EGF受容体やトランスフェリン受容体といった膜受容体のエンドサイトーシスが引き起こされる。これらの分子群の空間的な関係性は、光の回折限界以下の領域であるため、電子顕微鏡や超解像顕微鏡法で観察されてきた。しかし、これらの多種のタンパク質の同一部位での多色観察は難しく、主には1~2種類の標的タンパク質の観察結果を平均化することでクラスリン被覆部位の構造は研究されてきた。本研究では、多種類のタンパク質を同一細胞で連続多重染色できる超解像顕微鏡法IRIS(Kiuchi et al., Nat. Methods, 2015)を用いて、クラスリン被覆部位に集積する内在性の分子群の観察を行った。内在性の標的分子を観察するために抗体由来の結合解離プローブの作製方法を確立し、多色超解像観察に成功した。その結果、クラスリン被覆部位では、それぞれの標的分子が、乱雑に分布しているのではなく、被覆部位の縁や中心部位に傾向をもって分布している様子が観察された。しかし、縁や中心部内の微小領域では、標的分子間の位置関係は、多様で複雑であることが明らかになった。この微小領域でのタンパク質の配置は、クラスリン被覆部位の形成や崩壊、エンドサイトーシスといった機能との関係が考えられる。 また標的タンパク質への結合能を変え、迅速に解離するようにした改変抗体の作製方法をCell Reports Methods(Zhang et al., 2022)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRIS超解像顕微鏡法では、標的に結合解離する蛍光プローブを用いて、標的を可視化する。本研究では、アフィニティーカラムを用いて抗血清からポリクローナル抗体を精製し、蛍光標識した。そしてカラムへの抗体の結合条件や抽出条件、蛍光色素の標識条件を検討することで、標的に結合解離する抗体由来プローブの作製方法を確立した。現在、この方法で作製したクラスリン被覆部位に局在する内在性分子に対する抗体由来プローブを用いて、様々な条件の細胞を観察している。そしてクラスリン被覆部位の微小領域でのタンパク質間の位置関係と被覆部位の機能との関連を調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
IRIS超解像顕微鏡用の抗体由来プローブの作製方法は確立したので、今後は、EGF受容体のエンドサイトーシスに関わる内在性の標的分子群の観察を進めている。EGF受容体は、その発現量やHER2やHER4との2量体形成によって、エンドサイトーシスが遅れることが報告され、細胞の腫瘍化との関連が考えられている。そのメカニズムを調べるため、EGF受容体だけでなく、HER2-4までの抗体由来プローブを作製し、細胞膜でのHERファミリータンパク質のホモ・ヘテロダイマーの量を定量評価する。そしてEGF受容体のエンドサイトーシスの遅れの原因やHERのホモ・ヘテロダイマーの下流シグナルの解析へと研究を発展させる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、2022年度請求額とあわせ、2023年度の研究遂行に使用する予定である。
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