2022 Fiscal Year Research-status Report
核膜脂質代謝制御の変化に伴う核膜ストレス発生機構の解析
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21K06173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小笠原 裕太 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特任助教 (00773524)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質代謝 / オートファジー / 核膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞機能が適切に実行されるためには核膜構造の維持が重要であるが、DNA損傷や酸化ストレスにより核膜構成成分の劣化に伴う核膜崩壊や核-細胞質輸送の障害が起きることが分かっている。このような核膜の機能異常をもたらすストレスは「核膜ストレス」と呼ばれ、遺伝性早老症ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群など「核膜病」の発症にも関わることから、細胞や個体の老化プロセスを理解するための重要な現象として注目されている。本研究の目的は核膜や小胞体の脂質代謝の変化が核膜構造に与える影響を解析し、その制御機構破綻が核膜ストレス発生やnucleophagyやautophagyシステムの異常を介して如何にして核膜病や癌化をもたらすか明らかにすることである。申請者はこれまでに、オートファジーにおける重要な脂質輸送タンパク質であるATG2A/B 欠損細胞の解析から隔離膜への脂質流入が阻害されるとオートファジー関連タンパク質が集積する異常な構造体が形成されることを見出した。またこの構造体をLive-imaging およびFRAP法を用いて解析することでオートファジーの初期段階において特定のオートファジー関連タンパク質が流動性の高い構造を形成していることを見出した。この流動性の高い構造はこれまでに報告されているオートファジー関連タンパク質リクルート機構とは異なるメカニズムで制御されていると考えられており今後の解析によって新規のオートファゴソーム形成機構の解明が期待される。また癌遺伝子RASの活性化がautophagy(nucleophagy)を介した核膜構成成分(Lamin Bなど)の分解を誘導し、核膜ストレスの発生および細胞老化を引き起こすことが報告されているが、本研究で得られた知見を基により効率的なオートファジーの阻害剤を開発することで細胞老化を防ぐことが可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞質で働くCCTβを欠損させることで細胞内のホスファチジルコリン合成を核膜に限定させ、これにより核膜形態の欠損が起きることを見出すことができている。またオートファゴソームの形成における脂質供給の阻害によってオートファジーの初期課程において非常に流動性の高い構造が形成されることを見出しており、この構造を詳細に解析することで隔離膜への脂質流入機構が明らかになると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
核膜での脂質代謝異常によってautophagy(nucleophagy)を介した核膜構成成分(Lamin Bなど)の選択的分解が起きていることから、脂質代謝異常自体が選択的オートファジーの起点となる可能性がある。ATG2A/B 欠損細胞を用いた解析から隔離膜への脂質流入の阻害によってオートファジーの初期課程においてオートファゴソーム形成部位において流動性の高い構造が形成されることが明らかとなった。この構造は隔離膜への脂質供給に伴って形成される構造であると考えられるため核膜やERの脂質代謝と協調して機能していることが示唆される。このためオートファジー初期課程における脂質代謝関連因子およびAtgの挙動を解析することで選択的オートファジーなどの際に隔離膜が如何にして形成されるか明らかにできると考えている。これにより脂質代謝異常とオートファジーの発生の関係について明らかにしたい。
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