2021 Fiscal Year Research-status Report
Analyses of the mechanism of the nuclear shaping and its medical application
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21K06174
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷 時雄 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (80197516)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核形態 / 放線菌 / 成人T細胞白血病 / 化合物 / 高次エピゲノム / YB-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放線菌培養上清から分離した核の分葉化を誘導する化合物2057を用いて、細胞分化や癌化の過程における核の形を変化させるしくみの解明、即ち、核の形が変わることで遺伝子発現や、エピゲノムなど核内の高次クロマチン環境が受ける変化とその生物学的意義について解明する。令和3年度では、好中球の分化や成人T細胞白血病発症における細胞核の分葉化機構解明に取り組んだ。好中球の分化過程で生じる核の分葉化が、既に解明しているHeLa細胞における化合物2057誘導性のPYTD 核分葉化modelと同一の機構で誘導されているか解析した。好中球への分化活性を持つHL60細胞をDMSO処理することにより好中球細胞に分化誘導し、分化に伴い核が大幅に分葉化する過程でのYB-1やチューブリンなどPYTD 核分葉化model の主要因子について、局在変化を含め詳細な解析を行い、好中球の分化過程で生じる核の分葉化が、PYTD modelと同一の機構で誘導されていることを明らかにした。また、HeLa細胞において各種変異体を含めたYB-1を過剰発現する解析を行い、YB-1が核分葉化のキー因子であること、またYB-1に含まれる102セリン残基のリン酸化が核分葉化に必須であることを明らかにした。更に、成人T細胞白血病患者から樹立したED細胞を用いて、成人T細胞白血病における核の分葉化がPYTD 核分葉化modelと同一の機構で誘導されているか検証し、成人T細胞白血病における核の分葉化もPYTD 核分葉化modelで説明できることを明らかにした。これらの結果は、化合物2057で人工的に誘導される核の分葉化と、成人T細胞白血病や好中球細胞の分化過程における核分葉化など自然界での核分葉化が、同様な機構で誘導されていることを示しており、核のPYTD分葉化機構が普遍的な細胞内機構であることを強く支持する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画①で立案した好中球分化や成人T細胞白血病発症における核分葉化機構の解明については、好中球の分化モデルとなっているHL60細胞と成人T細胞白血病患者から樹立したED細胞を用いて、PYTD 核分葉化modelに関与するYB-1やチューブリン動態を解析することで、好中球分化や成人T細胞白血病発症における核分葉化など自然界で誘導される核分葉化がPYTD 核分葉化modelで説明できることを証明できた。即ち、PYTD分葉化modelが生命現象として普遍的な細胞内機構であることを明らかにできた。研究はほぼ計画どおり進展しているため「おおむね順調に研究が進展している」と判断した。 研究計画②及び④のHeLa細胞や成人T細胞白血病由来ED細胞株の正常核復帰に伴う遺伝子発現変化に関する大規模遺伝子発現解析についても、2057化合物で分葉化した核を元の楕円球状の核に戻す化合物YG217及びYG258を用いてHeLa細胞や成人T細胞白血病由来ED細胞を処理し、それぞれからRNA抽出して次世代シークエンスによるRNA-Seq解析が現在進行中である。成人T細胞白血病由来ED細胞については、次世代シークエンスによるRNA-Seq解析結果が既に得られており、インフォマティクスによるデータ解析中である。このまま解析が進めば、核の分葉化および分葉化からの核形態復帰という核の形態変化に伴い、グローバルな遺伝子発現がどのように変化するか、次年度には解明できると考えている。正常T細胞の遺伝子発現パターンとの比較検討を進めて、有効な治療薬の開発が待たれている成人T細胞白血病の治療薬シーズに核分葉化阻害化合物がなり得るか解析を進める予定である。③分葉核化における遺伝子位置、染色体配置、高次エピゲノム変化の可視化解析については、予備試験による条件検討を進めている段階で、次年度に本格的な解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画②及び④のHeLa細胞核分葉化核の正常核復帰に伴う遺伝子発現の動態変化解析、及び成人T細胞白血病由来ED細胞株の化合物YG217/YG258処理による分葉化核から正常核様形態に復帰した細胞における大規模遺伝子発現動態解析については、次世代シークエンスによるRNA-Seq解析結果が順次出てくる予定なので、インフォマティクス情報解析法の確立を急ぐ予定である。現在、インフォマティクス情報解析については研究室内で解析手法を身につけた学生がいないため、熊本大学レトロウイルス学共同研究センター佐藤研に依頼してデータ解析を進めている。細かな解析点の修正について、その都度依頼するのは効率的で無いので、次年度には本プロジェクトを担当する学生に佐藤研におけるインフォマティクスの情報解析法を学ばせて、研究室独自でもインフォマティクス解析できる体制を構築したいと考えている。インフォマティクス解析は今後大変重要な手法となるので、ワークショップやトレーニングコースなど、様々な機会を捉えてデータサイエンスにたけた研究室人材を育てていく予定である。 ③分葉核化における遺伝子位置、染色体配置、高次エピゲノム変化の可視化解析については、染色体ペインティングに必要な染色体特異的に染色する蛍光標識プローブがかなり高価かつ手技にある程度のノウハウが必要なので、この解析手法をルーティンで行っている学外の研究室に指導を受けつつ、効率的に解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、次世代シークエンスによるRNA-Seq解析及びその後のデータ解析(インフォマティクス解析)に至るまでの解析に時間がかかり、それらの予算が当初計画より大幅に少なかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。特に、データ解析(インフォマティクス解析)は、当初計画では、専門のインフォマティクス解析を受託する民間会社に依頼予定であったが、学内の遺伝情報データ解析を実際に行っている他研究室に依頼する形で本年度は解析を進めることができたので、その分の解析費用が全くかからなかったことも次年度繰り越し額が大きくなった理由である。頂いた科学研究費を無駄に支出することなく、できるだけ効率的に使用することに繋がった。令和4年度は多数のサンプルについて次世代シークエンスによるRNA-Seq解析を行う必要が生じており、それらの解析に繰り越し予算を充当する予定である。繰り越しができたことは、当初計画で令和4年度の直接経費が60万円しか計上できていなかったので、今後研究を大きく進める上で大変助かる。
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[Journal Article] Sequestration of RBM10 in Nuclear Bodies: Targeting Sequences and Biological Significance.2021
Author(s)
Ling-Yu Wang, Sheng-Jun Xiao, Hiroyuki Kunimoto, Kazuaki Tokunaga, Hirotada Kojima, Masatsugu Kimura, Takahiro Yamamoto, Naoki Yamamoto, Hong Zhao, Koji Nishio, Tokio Tani, Koichi Nakajima, Kishiko Sunami, Akira Inoue.
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Journal Title
International journal of molecular sciences
Volume: 22(19)
Pages: 1-14
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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