2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of respiratory diseases through analyses on the beating of tracheal cilia and resulting fluid flow
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21K06180
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
政池 知子 東京理科大学, 創域理工学部生命生物科学科, 准教授 (60406882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池上 浩司 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (20399687)
中江 進 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (60450409)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粘液繊毛輸送 / キチン / パパイン / 喘息 / プロカテロール / 繊毛運動 / cAMP-PKAシグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
気管内腔における微粒子輸送と繊毛運動の解析により呼吸器疾患病態の解明を目指した。まず、マウス気管の半円筒内腔における液流を評価した。喘息原因物質キチンは気管上皮に堆積しやすいが、粘液を模倣した高粘性溶液では低流速の定常流に乗って移動し、繊毛への吸着が抑制された。一方、繊毛先端付近の繊毛周囲層では、低粘性溶液は蛇行し非一様流を形成した。この層では、複雑な流れで微粒子の吸着を低減すると考えられる。このように、粘性が異なる二層の流体による異物排出のしくみが明らかになった。 次に、細胞内cAMP-PKAシグナル伝達経路に着目した。単離繊毛軸糸の先端に蛍光ビーズを結合し3次元運動解析を行った結果、cAMPにより運動速度と振幅が増加することがわかった。さらに、このシグナル伝達経路を活性化する喘息発作治療薬プロカテロールは実際に気管上皮繊毛の運動周波数と振幅を増加させ、液流の流速を上昇させることを示した。 最後に、気管上皮の細胞傷害に着目した。生きた個体に点鼻または摘出した気管上皮細胞を晒す方法によりプロテアーゼの一種パパインで処理すると、上皮の細胞傷害が起こる。ここに外液ATPを添加すると細胞内に浸透し繊毛運動が活性化した。しかし、高濃度パパイン処理ではこの応答が消失する。よって、パパインは細胞内で軸糸構造を破壊すると推察される。一方、ストレプトリジンOにより細胞に細孔を形成した場合も、外液ATP応答がみとめられた。この穴あき細胞モデルでは、細胞の骨格構造を維持したまま溶液組成を規定して繊毛運動を検証可能である。本実験系は、今後粘液繊毛輸送を調べる強力な実験系になると考えられる。 今後、本研究で条件検討を行った研究手法はアレルギーを誘導したモデルマウスの気管繊毛運動と液流の計測にも応用していく予定である。
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