2021 Fiscal Year Research-status Report
キラルなアクチン動態が細胞キラリティを誘導する機構の解明
Project/Area Number |
21K06188
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲木 美紀子 大阪大学, 理学研究科, 講師 (10747679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞キラリティ / 左右非対称性 / アクチン細胞骨格 / ミオシン1D |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は、体の外形や内部構造に左右非対称な形態や機能を持ち、その形成は、遺伝的に厳密に制御されている。近年、細胞の形態や動きにも左右性が見られることが明らかになりつつあり、それは細胞のキラリティと呼ばれる。ショウジョウバエでは、細胞キラリティが、組織のキラリティである左右非対称性形成に働くことが示されている。また、培養細胞やin vitroの系ではアクチン繊維の動態にキラリティがあることが示されている。しかしながら、これらアクチンのキラルな動態が、どのように細胞のキラリティを誘導できるかは明らかにされていない。本研究課題では、分子のキラルな動態による細胞キラリティの誘導機構を解明することを目的とした。これまで、ショウジョウバエ胚の後腸をモデル系として、アクチン細胞骨格系の動態の観察を試みてきたが、腸管が胚の深部にあることと、腸管自体がねじれていくことのため、観察が難しかった。このため、de novoでキラリティを誘導できる幼虫の表皮を用いたイメージングを行った。表皮細胞にMyosin1Dを強制発現させると細胞キラリティが誘導されることが示されている。GAL4-UASシステムを用いて表皮全体でMyosin1D-RFPとアクチン繊維を標識するマーカーであるLifeact-GFPを強制発現し、幼虫を麻酔した状態で表皮の観察を行った。Myosin1Dの細胞キラリティの誘導能とアクチンの渦巻きの誘導能は、アクチンと相互作用するモータードメインにあることがわかっている。そこで、Myosin1Dのモータードメインの一部をキラリティ誘導活性のないMyosin1Cとスワップすることにより、キラリティ誘導を担うドメインの探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼虫の表皮を用いたアクチン細胞骨格動態の観察は、現在条件検討の段階であるが、キラリティがde novoで形成される時期が三齢幼虫の初期であることを発見した。Myosin1DおよびMyosin1Cに関するドメイン解析では、Myosin1Cの活性に十分な領域を同定するに至ったから。
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Strategy for Future Research Activity |
幼虫表皮を用いたアクチン細胞骨格動態の観察では、ライフアクトを用いたアクチン繊維の観察の他に、ミオシンGFPを用いて、ミオシンIIの動態を調べる。また、幼虫の麻酔法を改良し、より長期間イメージングを行い、キラルな動態を観察する。Myosin1Dの活性に十分な領域の同定には至っていないため、これまで着目していたループ構造に加えて、構造解析の結果をもとにしたより大きなブロックに関してスワップ実験を行う。キラリティの誘導活性を担うドメインを同定できたらin vivoのアクチン動態およびアクチンとの解離定数を調べる解析を行う。
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Causes of Carryover |
蛍光顕微鏡を購入予定であったが、研究室のものでまかなうこととし、ドメイン解析でさらに必要となった系統作製費に次年度あてることとした。
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Research Products
(4 results)