2023 Fiscal Year Research-status Report
感覚受容細胞と神経のコミュニケーションによる感覚器再生メカニズムの解明
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21K06189
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
秋山 隆太郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (00790403)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感覚器 / 感覚神経 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではゼブラフィッシュ側線感覚器をモデルとし、感覚細胞と神経とのコミュニケーションに注目する。イメージング技術を駆使して、ゼブラフィッシュ側線感覚器の再生過程における感覚有毛細胞と神経との協調を解析することで、側線感覚器が機能的な再生を果たすメカニズムの解明を目指す。感覚有毛細胞と側線神経との協調を仲介する因子として、側線感覚器の支持細胞が分泌する線維芽細胞増殖因子に着目している。この因子はパラクラインに働き有毛細胞の分化を負に制御することが知られているが、本研究では特に有毛細胞再生時の神経投射における役割について解析する。 昨年度までに側線線感覚器で発現する2つの線維芽細胞増殖因子についてCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトゼブラフィッシュ系統を樹立した。ノックアウト胚の解析の過程で、当初注目していた有毛細胞群と神経線維との接続部とは異なる領域において、側線神経軸索が形成不全となる予想外の表現型を見出していた。今年度はこの表現型の解析を更に進めた。その結果、ノックアウト胚では側線神経に隣接するシュワン細胞の増殖が野生型と比べ亢進していること、シュワン細胞が軸索間に異所性に配置されて軸索の束化が不完全となることを示唆するデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していたノックアウト胚の解析から予想外の表現型が得られ、その原因を説明し得る観察結果が徐々に集まりつつある。 一方で、当初予定していた有毛細胞再生時の神経投射については、進捗がやや遅れている。これは、既にノックアウト系統との交配を終えていた神経可視化のためのトランスジェニック系統について、神経で発現する蛍光タンパクの輝度が想定よりも低く、目的の観察が困難であることが判明したためである。対応策として蛍光輝度が十分な別のトランスジェニック系統とノックアウト系統との交配をやり直し、現在解析を進めている。 したがって総合的に、進捗がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
有毛細胞再生時の神経投射における線維芽細胞増殖因子の役割については、新たに交配をやり直した系統を用いて、解析を進める。 神経軸索束化の表現型については、特にシュワン細胞の挙動に着目しながら解析をすすめ、末梢神経の軸索束化に関する新たな知見につなげたい。
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Causes of Carryover |
ノックアウト系統とトランスジェニック系統との交配をやり直したことで、その後に予定されていた観察・解析作業にかかる費用に未使用額が生じた。次年度では観察・解析作業を進められる見込みであるため、その際に生じる試薬購入・動物維持の費用として使用したい。
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