2022 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュ舌顎骨のリモデリング過程における細胞間相互作用の解明
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21K06191
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
和田 浩則 北里大学, 一般教育部, 教授 (70322708)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 骨リモデリング / 破骨細胞 / 軟骨細胞 / mmp9 / TRAP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ゼブラフィッシュ舌顎骨をモデルに、骨格系がリモデリングするさいの細胞間相互作用を明らかにすることである。骨格系リモデリングの重要な組織として、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、破骨細胞の相互作用が考えられる。昨年度は、トランスジェニック系統と突然変異体(csf1r-/-)をもちいて、mmp9陽性細胞が骨髄へ侵入する過程と、そのさいに軟骨細胞が消失する過程を観察した。本年度は、あたらにTRAP:GFP系統を樹立し、舌顎骨に加えて、側線鱗・角鰓骨(咽頭歯)における破骨細胞の動態を解析した。 (1)骨髄に侵入するmmp9陽性細胞は、TRAP:GFPを発現しない。TRAPは破骨細胞の主要マーカーであり、骨髄に侵入する細胞は破骨細胞ではない可能性が高い。近年、マウスの研究からマクロファージ由来ではない軟骨吸収細胞の存在が明らかになっている。現在、そのマーカーを単離して、in situ hybridazationによる細胞の同定を行っている。 (2)側線鱗の破骨細胞は、明確なsealing zone(骨基質に接着するためのactin richな構造)が見られるのに対し、舌顎骨・角鰓骨では見られない。とくに、角鰓骨では破骨細胞が細長い突起を伸ばし、生え替わる咽頭歯(壊されて脱落する歯)の歯髄に侵入する。咽頭歯は決まった順番で吸収され脱落することから、破骨細胞の動態の解析にすぐれたモデルとなることが分かった。さらに、破骨細胞は、領域によって異なる制御を受けていると考えられた。 本研究計画の背景となるデータを論文として発表した。Iwasaki et al (2022) Dev.Biol. 489, 134-145.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、骨格リモデリングのさいに、グリア細胞が主要な役割を担っていると考えていた。しかし、舌顎骨と他の骨との比較から、領域特異的に異なる制御を受けていることが分かった。グリア細胞の機能解析については一時中断している。また計画では、脂肪細胞の標識系統を樹立する予定でプラスミドを構築しインジェクションを行ったが、現在までのスクリーニングでは得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、グリア細胞の他にもリモデリングを主導する組織があることが分かった。その一つが骨髄(軟骨組織)に侵入するmmp9陽性細胞である。この細胞はTRAP活性を持たず、突然変異体(csf1r-/-)でも影響を受けないことから破骨細胞ではないと考えられる。今後、遺伝子マーカー(in situ hybridization)によって、この細胞の同定を行う。また、mmp9陽性細胞と、消失する軟骨細胞の相互作用に注目し、細胞膜と軟骨基質(コラーゲン)の動態解析を行う。さらに、角鰓骨では、最も早く(9日胚)破骨細胞が出現し、決まった順番で咽頭歯が吸収されることから、破骨細胞の動態解析に有効であることが分かった。今後、すでに確立してあるトランスジェニック系統を用いて、角鰓骨における破骨細胞を制御する仕組みの検討を行う。
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Causes of Carryover |
一部の機器について更新の必要があったため、次年度に使用することとした。また、旅費についてはコロナ感染症の状況を見て判断し、学会出張を控えたため執行しなかった。
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Research Products
(2 results)