2021 Fiscal Year Research-status Report
確率論的モデルからアプローチするマウス原始卵胞活性化プロセスの解明
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21K06193
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高瀬 比菜子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40754528)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原始卵胞 / 卵母細胞 / 卵巣 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の卵巣中では、未熟な卵母細胞は原始卵胞と呼ばれる構造中で休眠している。出生後、原子卵胞は少しずつ活性化されて成長を開始する。本研究課題では、原始卵胞の活性化は確率論的に決定されているのではないかという仮説について検証することを目的としている。 原始卵胞の活性化頻度については基礎的な知見が示されていないため、活性化がどのような時空間的ダイナミクスを示すのかを明らかにしなければならない。卵巣の卵母細胞数を全計測することに加え、卵母細胞の局在を三次元的に把握するために、組織透明化法とライトシート顕微鏡での観察を組み合わせることとした。組織透明化法および免疫染色法の条件を検討することによって、卵巣内すべてのMVH陽性の卵母細胞を明瞭に検出できる手法を確立した。しかしながら、これだけでは休眠状態と活性化後の卵母細胞を区別することが困難であったため、活性化後にのみ蛍光を発するレポーターマウスの利用を検討した。具体的には透明帯タンパク質の発現に伴って緑色蛍光を発するレポーターマウス系統を交配により作出した。蛍光実体顕微鏡下で、レポーターマウス由来の卵巣を直接観察したところ、活性化後の卵母細胞特異的に蛍光が観察され、三次元解析の有力なツールとなり得ることが予想された。 また、予定していたシングルセルトランスクリプトミクスについても、我々の保持しているデータを利用することで解析を開始しており、少なくとも卵母細胞が休眠中と活性化後の亜集団に分けられうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、すべての卵母細胞が蛍光を発するマウス系統を作出し、ホールマウント卵巣培養系と組み合わせて原始卵胞の活性化をリアルタイムに検出する計画であった。しかし、培養継続中に共焦点顕微鏡で観察を行う場合、深部や内部が不鮮明な観察像になってしまうこと、卵巣内の卵母細胞数が計測不可能であること、さらに原始卵胞活性化の明瞭な指標がないことが問題点として挙がってきた。この課題を解決するため、固定した卵巣全体に対して組織透明化法とライトシート顕微鏡を用いる解析法に切り替えた。免疫染色の条件検討を含め、予備的実験に時間を要したが、今後使用する技術については準備が完了していることから、本年度の研究の達成度はおおむね良好であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
レポーターマウスの交配と卵巣を出生後のマウスから経時的にサンプリングを行い、組織透明化法およびライトシート顕微鏡での観察へ供する。様々なサンプリング時期の卵巣を用いて三次元的な画像を再構築し、これらのデータをもとに休眠状態および活性化後の卵母細胞を判別できる方法を検討する。同時に、研究協力者と議論の上、原始卵胞活性化にフィットする数理モデルの作成を開始する。卵母細胞活性過程の詳述のためには、ひきつづきトランスクリプトミクスを利用する予定である。卵母細胞について擬似時系列解析を進め、活性化時に発現上昇する遺伝子の探索を行う。
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Research Products
(5 results)