2023 Fiscal Year Research-status Report
再生しない成体ツメガエル四肢を再生させ再生能の実体を示す:パターン形成と分化から
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21K06195
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
横山 仁 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90455816)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 四肢再生 / 両生類 / パターン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は幼生では完全な四肢を再生するが、成体では1本の棒状軟骨しか再生しないツメガエルを対象にして、パターン形成と細胞分化の両面から成体の四肢再生を回復させ、再生能力の差の原因を実証することを目的としている。パターン形成遺伝子(shh)をより強力に発現する遺伝子組換え(Tg)ツメガエルの系統を用いると、局所的な発現誘導によりスパイクのパターンにより明確な変化が生じることを確認した。さらにshh遺伝子の四肢特異的なエンハンサーを可視化したTgツメガエルを用いて、エンハンサーが成体の四肢で不活性化することに関連して、同エンハンサーのDNAのメチル化率がTgツメガエルにおいても幼生と比べて成体で高くなること、一方で成体の再生芽でもエンハンサーの活性化に必要な転写因子を発現していることを明らかにした。さらに人為的なメチル化によってエンハンサーにつないだレポーターの活性が下がることをin vitroで示した(Tada, Higashidate et al., Dev Biol, 2023)。 さらに軟骨分化のカギとなるSox9タンパク質の局在を蛍光免疫染色で可視化した上で、ツメガエルの幼生と成体のそれぞれの四肢再生における局在を比較した。再生芽内におけるSox9陽性細胞の分布の偏りを比較する方法をいくつか試行したが、基礎生物学研究所の加藤輝氏らの協力により、簡便に再現性良く判定する方法を考案した。この方法により、成体の四肢の再生芽では特定の時期を過ぎると軟骨分化が亢進することを見出した。さらに熱ショック依存的にSox9の機能を阻害するTgツメガエルを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成体の四肢再生におけるshhの発現誘導による形態変化を確認するとともに、shhの四肢特異的なエンハンサーの活性化の有無と四肢の再生能力との対応関係を示し、論文発表を行うことができた。一方で成体の四肢再生での軟骨分化を判定する方法については、確立するまでに予定よりも時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
shhの発現誘導による影響を形態だけでなく、遺伝子発現の面からも詳細に解析する。また確立した軟骨分化の判定方法を用いて、ツメガエルにおける幼生と成体のそれぞれの四肢再生を比較する。四肢をほぼ完全に再生できるイモリ(イベリアトゲイモリ)とツメガエルのそれぞれの四肢再生の間でも同様の比較を行う。また作製したTgツメガエルを用いて、成体の四肢再生においてSox9の機能を阻害して、再生能力を回復させる実験を行う。
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Causes of Carryover |
軟骨分化の判定方法の確立に時間を要したため、軟骨分化に関連する実験の実施が予定よりも遅れ、そのぶん次年度使用が生じた。軟骨分化の解析に関連した実験の実施、成果発表旅費、さらに論文発表に関連する英文校閲費などに使用する予定である。
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