2021 Fiscal Year Research-status Report
心臓発生におけるPitx2遺伝子の極性をもった発現の役割
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21K06203
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小柴 和子 東洋大学, 生命科学部, 教授 (30467005)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心臓発生 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の心臓の形態は様々であり、魚類は1心房1心室、両生類は2心房1心室、ワニ目・鳥類・哺乳類は2心房2心室の心臓を有する。このような形態変化は2心房2心室の心臓をもつマウスの心臓発生においても認められ、心房と心室の区画ができた後に、心房中隔と心室中隔が形成されることにより、2心房2心室の心臓が形作られる。心室中隔の形成には転写因子Tbx5の左心室への局在が心臓の進化発生において重要であることが分かっており、心房中隔形成においても心房に極性をもって発現する因子の関与があるのではないかと考え、マウス心房で左右に極性をもって発現する因子をゼブラフィッシュ、肺魚、アフリカツメガエル、マウスで比較したところ、左心房へのPitx2の局在が心房中隔の形成と非常によく関連していることを見出した。そこで、Pitx2の極性をもった発現が、心房中隔形成および心臓機能に与える影響を明らかにするために、Pitx2を心臓全体に発現するマウスを作出し、形態解析および遺伝子発現解析を行った。Pitx2の過剰発現によって発現が上昇する因子のうち、表現型との関連が深いと考えられる因子に着目し、Pitx2による発現制御機構の詳細について解析を進めている。また、心臓は、拍動を担う作業心筋だけでなく、洞房結節といった特殊心筋や心臓線維芽細胞などのさまざまな細胞種によって構成され、それらの相互作用が心臓の形成、機能維持に重要である。そこで、Pitx2の過剰発現による影響を細胞種ごとに調べるための解析系を構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析の結果、Pitx2過剰発現マウスにおいて特異的に発現上昇が認められたHas2遺伝子に着目し、その発現の様子をqPCR、in situハイブリダイゼーションおよび免疫組織染色によって確認し、異所的に発現しているPitx2との領域的な比較を行った。また、発現に変化のみられた遺伝子のうち、心房中隔形成と関連がありそうな遺伝子をクローニングし、発現解析を行った。また、シングルセルRNA-seq解析を行うための準備として、細胞凍結の条件を確認し、解析に必要な量のサンプルの回収をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
Has2遺伝子の上流にPitx2の結合配列が認められたことから、結合配列を含む上流領域をルシフェラーゼベクターに組み込み、ルシフェラーゼアッセイを行うことにより、Pitx2によるHas2の転写制御機構を明らかにする。また、まもなくシングルセルRNA-seq解析に必要な量のサンプルが用意できることから、今年度中にシングルセルRNA-seq解析を行い、細胞種ごとに発現変化する遺伝子を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度中にシングルセルRNA-seq解析を依頼する予定であったが、細胞調製の条件検討、及び、サンプル回収に時間を要してしまい計画がずれ込んでしまった。条件検討は終わり、サンプルは順調に回収できているので、2022年度初めには解析を依頼し、年度内にはデータ解析を始められる予定である。
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Research Products
(5 results)