2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring photoprotective function of carotenoid under strictly anaerobic conditions
Project/Area Number |
21K06220
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
浅井 智広 立命館大学, 生命科学部, 講師 (70706564)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 緑色硫黄細菌 / 嫌気 / カロテノイド / cruC / 光阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、緑色硫黄細菌が絶対嫌気的な環境でも光合成の光阻害を受けるかどうかについて、生理学的な実験による検証を行った。緑色硫黄細菌Chlorobaculum tepidumを様々な光強度の環境下での光合成による増殖速度を調べ、光-光合成曲線を測定した。その結果、C. tepidumは高い光強度の環境下で増殖速度が低下し、高濃度の硫化物が安定に存在する酸素濃度1 ppm以下の環境であっても光合成の光阻害現象が起こることを明確に示した。カロテノイド配糖体をもたないcruC欠損株では、光阻害が起こる光強度が野生株よりも有意に低いことがわかった。これは、カロテノイド配糖体が嫌気環境下での光保護機能を担うことを示した、先行研究の結果と矛盾しない。一方で、cruC変異株で光阻害が観測された光強度でも、その光量子束密度は緑色硫黄細菌の天然の生育環境中では到達し得ないレベルであることもわかった。培養の光源を変更し、近赤外光のみの照射で同様の実験を行ったが、光-光合成曲線に顕著な光質依存性は認められず、光阻害が起こる光強度に大きな変化は見られなかった。これは、緑色硫黄細菌の嫌気的な光合成で生じる光阻害は、光合成反応のターンオーバー速度を超えるようなクロロフィルの高頻度の励起を必要としており、光強度が低いはずの天然の環境中でも同様の状況が生じていることを示唆している。現状ではそのメカニズムは不明であるが、本研究で培養に使用した光源がLEDであり、太陽光とは大きく異なる発光特性を持つことが、高い光強度でしか光阻害が観測されなかった原因である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の最大の目標であった、緑色硫黄細菌で起こる光阻害現象の実測は達成されており、研究当初に予想していた結果に近いデータが得られている。今後の研究ではその発生機構と防御機構が焦点となるが、それぞれについて既に着手しており、その成果が出つつある状況にある。全体として、コロナ禍での研究の困難さを除けば、研究計画で予定していた研究内容は概ね実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
緑色硫黄細菌で嫌気的な光阻害が起こることは実証できたため、その発生機構とカロテノイド配糖体によるその防御機構について詳細に調べる。具体的には、C. tepidumの増殖を指標とした光-光合成曲線を様々な培養条件で測定し、光阻害の発生に必要な条件を特定する。特に、発光特性の異なる光源での培養、培地の組成を中心に検証を進める。また、既に着手している超高速分光法によるエネルギー移動過程の実時間追跡を進め、カロテノイドによるクロロフィルの消光過程を明らかにする。
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Causes of Carryover |
超高速分光法によるエネルギー移動反応の追跡実験について、研究の進捗状況に合わせて一部の測定を次年度以降に延期した。サンプル調製や測定に必要な物品や旅費を繰り越した。次年度では延期した分光実験を実施し、測定サンプル調製や測定の実施に関わる旅費に繰り越した予算を充てる。
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Research Products
(15 results)