2022 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of plant vacuolar trasnport system regulated by RAB5
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21K06222
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
海老根 一生 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 助教 (90590399)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液胞輸送 / 膜交通 / RAB |
Outline of Annual Research Achievements |
液胞は植物の細胞の中でも貯蔵・分解・空間充填・浸透圧調節など多様な機能を担うオルガネラである。この多様な液胞機能を果たす為に、多くのタンパク質が液胞へと輸送されている。申請者は、モデル植物であるシロイヌナズナにおいて、液胞への輸送経路は少なくとも4つあり、それぞれの経路が異なるタンパク質を液胞へ輸送していること、中でも植物固有の液胞輸送経路が環境応答に関わることを明らかにしてきた。しかしながら、複数の液胞輸送経路にはどのような性質の違いがあるか、液胞輸送経路の多様化は植物において普遍的なものなのか、といった疑問が残されている。本研究課題では、シロイヌナズナを用いて液胞輸送経路の分子メカニズムを詳細に解析し、これを広範な植物種においても解析することで、植物の液胞輸送経路の分子メカニズムと保存性を明らかにすることである。本年度はエンドサイトーシス経路で機能する鍵因子であるRAB5およびRAB5の活性化因子であるVPS9aについて、共免疫沈降で単離された相互作用候補因子のうち、特にVPS9aタンパク質のリン酸化との関連について詳細な結合解析や細胞内局在解析、変異体を用いた詳細な解析を進めた。この他、異なる液胞輸送経路で運ばれることが期待される人工積荷タンパク質をシロイヌナズナに導入し、野生型および変異体における局在解析を進めたところ、一部のタンパク質において論文で報告されている局在パターンと異なる結果を得た。この原因として解析に使用している組織・細胞が異なることが原因である可能性を考え、現在細胞による局在異常パターンの詳細な比較を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定どおり、相互作用候補因子の単離と局在解析を進め、これらが液胞輸送の鍵因子であるRAB5やその制御因子であるVPS9aと細胞内で共局在することを確認することができた。また、VPS9aのリン酸化に注目し、相互作用因子の解析からVPS9aのリン酸化に関わると考えられる因子を新たに単離した。一方で、複数の液胞輸送経路の役割を理解する上で、わずかな差のみで異なる液胞輸送経路へと積み込まれる積荷の解析は重要な役割を持つため、本年度はこれらの解析ツール作出と変異体における挙動を確認することで有効性の検証を進めたが、想定と反して用いる組織・細胞によって局在パターンが異なる可能性を示唆する結果を得たため、この方針での研究の進展に遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を進展させ、新規に単離したRAB5およびVPS9aの相互作用因子について、詳細な細胞内局在解析と変異体における細胞内輸送異常の解析を進めることで、それらの因子が液胞輸送経路に果たす役割の詳細を明らかにする。特に、VPS9aのリン酸化の意義について詳細な解析を行うことで、細胞内におけるRAB5活性化の時空間的な理解を目指す。また、これらの因子の藻類から陸上植物までの多様な生物種の相同遺伝子を単離し、結合能を解析することで機能保存性を解析する。人工的に作成した液胞輸送経路の積荷タンパク質については、変異体における挙動を組織・細胞ごとに詳細に確認し、細胞ごとのそれぞれが運ばれる液胞輸送経路の違いを検証する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では2021年度に多様な植物種からRAB5およびその相互作用因子の相同因子の単離を行う予定であったが、タンパク質相互作用の解析手法の改良に時間がかかったため、解析に必要な相同因子の特定に時間がかかり、この実験に遅れが生じた。また、2022年度には人工的に作成した液胞輸送経路の積荷タンパク質を用いた解析を進めたが、液胞輸送理解の上で解析する組織・細胞の違いを検証することの必要性が生じたため、異種植物の液胞輸送関連因子の解析についても用いる組織の検証が必要になり、これを用いた実験にも遅れが生じた。2023年度には主にこれらの研究に必要な消耗品と成果報告に助成金を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)