2021 Fiscal Year Research-status Report
Genome DNA dynamics in the transition from vegetative to reproductive growth stages
Project/Area Number |
21K06225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 雄一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60183125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 光知 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20343238)
都筑 正行 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40845616)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生殖成長期 / マイクロRNA / ゼニゴケ / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はゼニゴケゲノム中、陸上植物間で非常によく保存されたマイクロRNA(miRNA)種の同定、およびそれらの持つ生物学的意義を解析している。その中の一つであるmiR529c遺伝子座を人為的に破壊し、その標的である転写因子SPL2の発現を促すと、環境変化なしにゼニゴケが生殖成長へと移行することを見出した。このことはモデル植物シロイヌナズナにおいて、miR529cとorthologousなmiR156a-hとSPL2/3/4/5/6/9/10/11/13/15の間で見られる抑制調節の様式とほぼ同質の実験結果である。miR156とmiR529cは配列も21塩基中17塩基の配列が同じでその前後が異なる配列となっているに過ぎず、いずれも発生の進行に大きく寄与する転写因子SPL遺伝子の抑制に関わる。両者の生成から制御の解析を通じて陸上植物の生殖成長移行への共通原理が理解できると考え、miR156/529cのプロセッシングゾーン、SPL遺伝子の転写発現ゾーン、さらに発現調節ゾーンを解析する実験系の構築を行なった。 自然の中では日の長さなどの環境変化という刺激によって生殖成長期へと移行するが、miRNAに注目することでこうした外界環境変化と切り離して解析できる系の構築を行なった。miRNAが生成される場は核であることが知られ、前駆体RNAとしてまず転写されて、その後D-bodyと呼ばれる核内構造体でプロセッシングを受けることが知られているので、まずそのプロセッシングゾーンについて解析することを想定し、D-bodyの構成因子としての酵素DCL1の野生型、変異型、DCL1のパートナー分子とされるHYL1タンパク質やSEタンパク質について、蛍光タンパク質融合型遺伝子を発現する形質転換体を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来はSpectorらが報告した(2007)ようにDCL1の細胞内局在では、核内に散在する10個前後の顆粒状の局在(D-body:発現調節ゾーン)が認められていた。ただしそれは強力なプロモータによる強制発現をした状態で観察されたものである。今回、DCL1-GFP融合遺伝子をDCL1固有のプロモーターから発現させる形質転換体シロイヌナズナを用いて観察した。するとDCL1-GFPの発現が認められるにもかかわらず、顆粒状あるいはドット状の構造が認められる細胞は非常に稀であった。むしろ予想と異なり、細胞核の全体に広がる様子が観察された。細胞観察による転写発現ゾーンと発現調節ゾーンの間の相対位置を解析していくというアプローチは再考を必要とすることが明らかとなった。細胞内での局在性の変化などが起こることを期待していたが、そうした変化を発生の進行とともに認めることは難しいと考えられたため、細胞レベルでの場の解析を、別のDNAレベル・クロマチンレベルで解析する方法を用いることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマチン状態変化、DNAメチル化パターン変化からの解析: 栄養成長期におけるSPL遺伝子座、MIRNA遺伝子座と生殖成長期のSPL遺伝子座、MIRNA遺伝子座の間で、RNAポリメラーゼII(RNAP II)に対するアクセシビリティの変化を、ATAC-seq解析を用いて検討する。関連遺伝子周辺のDNAのメチル化の程度、クロマチン構造の変化、クロマチン活性の変化を捉え、相転換が起こるメカニズムを理解する。ATAC-seq法を応用するとクロマチンが開いた状態であるほどリードが得られる一方で、抑制的なクロマチン領域からのリードは相対的に低くなる。そこでマイクロプロセッサー複合体の構成因子の有無がマイクロRNA遺伝子座、標的遺伝子座、およびその周辺のクロマチン状態を変化させるか否かに着目して解析を行い、双方間の機能的関係の有無を検証する。 SPL転写因子の下流に位置する遺伝子群の同定: SPL自体の発現量や時期が変化するだけでなく、発生ステージが進行する中で下流に位置する遺伝子のプロファイルが変化することが予想される。ゼニゴケ、シロイヌナズナを用いて、SPL転写因子の支配下にある遺伝子の情報を得るためのRNA-seq解析を行う。 転写ゾーン、プロセッシングゾーン、発現調節ゾーンの有様を、DNAあるいはクロマチンレベルの解析方法を導入して明らかとする。ゼニゴケについてはこうした手法がまだ未成熟な状況にあるので、使用する組織部位、育成方法などを検討して、手法の導入を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による大学研究室への学生の登校自粛期間もあり、研究実験が断続的となり、使用予定額が当初の見込み・計画を下回った。大学への登校についての自粛策が解除されたタイミングで研究の規模を元に戻すことを考えた。また実施計画についても一年目の解析結果に基づいて変更を加えたため、その方向での支出を2022年度の当初計画より、多く捻出することとした。
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Research Products
(7 results)