2022 Fiscal Year Research-status Report
Genome DNA dynamics in the transition from vegetative to reproductive growth stages
Project/Area Number |
21K06225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 雄一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60183125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 光知 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20343238)
都筑 正行 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40845616)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 成長期変換 / シロイヌナズナ / ゼニゴケ / RNAプロセッシング / 核内顆粒 / D-body / 発現調節ゾーン |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロRNA(miRNA)は、真核生物のゲノム中にコードされるノンコーディングRNAの一種である。長さは20-22塩基長ほどで、植物における生活環のなかで発生制御、ストレス応答に関わる重要なタンパク質がmRNAから翻訳される段階を負に制御することで重要な制御機能を担っている。我々は陸上植物間で非常によく保存されたmiRNA種を同定、およびそれらの持つ生物学的意義を解析し、長い植物進化の中で保たれてきた遺伝子発現モジュールの機能を解析してきた。ゼニゴケのmiR529c-転写因子SPL2、miR319遺伝子座-RKD/MYB21のモジュールを乱すと、前者では栄養生殖から生殖成長への移行、令和4年度において後者では2次的栄養生殖器官の形成低下が起こることを確認した。いずれもシロイヌナズナにおけるオルソロガスなmiRNAと標的転写因子の間で見られる生命現象との共通性を窺わせた。生成から制御の解析を通じて陸上植物の成長過程や生殖成長移行への共通原理が理解できると考えられた。 miRNAのプロセッシング・生成に関係するDCL1タンパク質(野生型、変異型)-蛍光タンパク質による相補型の組換えシロイヌナズナ植物体を確立し、miRNAのプロセッシングが起こる細胞内部位(プロセッシングゾーン)に関する観察を行なった。従来報告されているD-bodyというはっきりとした構造体は必ずしも確認できず、常に見出されるのは核内の細かい粒子状の局在であることが観察された。その数もかなりのものであった。機能を保持したDCL1アレルタンパク質も同様の局在を示した。興味深いことに細胞質にも顆粒状の局在が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該分野で従来引用されるSpectorらの報告ではDCL1の細胞内局在として、核内に2-10個前後の数で顆粒状の構造D-body(発現調節ゾーン)が散在する様子が報告され、miRNA前駆体プロセッシングに関係する局在場所として考えられていた。ただしSpectorらの実験では、正常型のDCL1を発現している野生型植物でさらにDCL1-GFPを異所的に発現する植物体を観察していること(機能しているかが不明)、DCL1の発現を固有プロモーターとはいえ非常に短いもので行っていること、現在のものに比べて当時は顕微鏡の性能も劣ることなどがあり、遺伝子本来の発現の姿が見ることが従来できていなったという懸念が払拭できていない。今回、我々はDCL1固有プロモーターとして3000bp以上の長さからなるものを用いてDCL1-蛍光タンパク質融合遺伝子をdcl1-5変異体に導入し、機能相補が確認された形質転換体シロイヌナズナを確立した。根端組織を観察すると分裂領域の細胞でその発現が多くみられ、その細胞の中で所在を確認することができた。従来の報告のような顆粒状あるいはドット状の局在が認められる細胞は非常に稀であった。大半の細胞で核質全体に小さい顆粒が多く広く観察された。伸長領域ではその発現は下がっている。こうした観察結果は、並行して行ったWhole mount 免疫染色法による観察の結果とも一致した。今回得られた結果は植物体の中でDCL1タンパク質が機能を発揮しながら実際に存在する細胞内部位をより自然に示しているものと考えられる。DCL1-蛍光タンパク質は核小体にも存在が認められた。さらに細胞質にもその存在が検出された。それぞれの異なる局在ごとに受け持つ機能が異なるかどうかを検討することは、今後検討すべき興味深い点である。
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Strategy for Future Research Activity |
DCL1の相補体ラインを確立した際と同様の戦略で、DCL2, DCL3, DCL4についてもそれらタンパク質の所在の可視化観察が可能なラインを作成する。その上で細胞内局在を観察する。DCL1についての情報も併せ、植物の発生時期に依存した発現、あるいは環境ストレス変化に対する発現や細胞内局在の変化、それと連動したsmall non-coding RNAのもつ機能について解析を続ける。SPLなどの標的遺伝子の転写発現ゾーン、それと比較しながらmiRNAの発現調節ゾーンを解析することを目標とした。具体的には標的SPL2遺伝子の転写部位、miR529cのプロセッシングゾーンについて関連遺伝子周辺のDNAメチル化状態、クロマチン状態を知るために令和3年度の先進ゲノム支援を受けてATAC-Seq解析を行なった。材料としてゼニゴケを用いた例は過去に少ないということでチャレンジしたが、シロイヌナズナを用いた例と同様に葉緑体DNA由来のreadの頻度が高く、特定遺伝子周辺でのクロマチン状態の変化を追うことは難しいと判断された。一方で令和4年度においておこなった細胞観察によるDCL1タンパク質の局在情報はmiRNAのプロセッシングを行う場を示すものと解釈されるが、従来の報告結果を疑問視するものとなった。以上のことから、標的遺伝子の場とmiRNAの相対位置を解析していくというアプローチは再考を必要とすることが明らかとなった。目的のためには、当初の予定と異なる手法も加えることとする。案として栄養成長期と生殖成長期におけるクロマチンの修飾状態の変化をChIP-seq法によって解析する、各遺伝子周辺領域のDNAメチル化状態の変化をbisulfite-seq法あるいはEM-seq法を用いて解析するなどを考慮している。こうしたデータの解析に関しては研究分担者の都筑正行氏の指導を仰ぎながら進める。
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Causes of Carryover |
まず、令和3年度はコロナ禍ということもあり研究活動が当初計画に到達せず、未使用金額が当初の予定より多かった。その分が繰越した形で令和4年度の所要額としてスタートした。年度末時点で、当初の申請時より令和4年度の研究活動に伴う支出は増えたが使い切ることがなかったために、令和5年度における使用金額が生じた。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] The Renaissance and Enlightenment of Marchantia as a model system2022
Author(s)
Bowman, J.L., Berger,F., Briginshaw, L.N., Davies, K.M., Dierschke, T., Dolan,L., Fisher, T.J., Flores-Sandoval,E., Futagami,K., Ishizaki, K., Kato, H., Kohchi, T., Levins, J., Lin, S-S., Nishihama, R., Romani, R., Tanizawa, Y., Tsuzuki, M., Watanabe,Y., Yamato, K.T., Zachgo, S.
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Journal Title
The Plant Cell
Volume: 34
Pages: 3512-3542
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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