2021 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞壁形成における細胞内膜系オルガネラの形態制御
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21K06229
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
國枝 正 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (90566077)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 内膜系オルガネラ / 膜交通 / 細胞壁 / ペクチン / ユビキチンE3リガーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞は細胞膜外に細胞壁を形成することで細胞、ひいては個体の形態を制御している。細胞内で合成された細胞壁の構成成分は、内膜系オルガネラを介した膜交通経路によって細胞膜外へと輸送される。内膜系オルガネラ間の輸送には膜融合や分離を伴うが、それらの内膜系オルガネラ形態への作用はよく分かっていない。本研究では、細胞壁構成成分の分泌輸送に着目して、内膜系オルガネラの形態形成における分子制御メカニズムの解明を目的とする。 本研究における解析の核因子であるユビキチンE3リガーゼについて、標的タンパク質へのユビキチン付加を担うドメインに変異をもつ当該因子の発現が内膜系オルガネラの形態異常を引き起こすことをこれまでに見い出している。エストロゲンによる遺伝子発現誘導システムを利用して、変異型当該因子の発現誘導後の細胞を経時的に検証したところ、誘導後6時間目にはすでに形態異常を示す様子が観察され、その後12時間目にかけて内膜系オルガネラの肥大化が観察された。これらの異常なオルガネラ構造は野生型では観察されないことから、当該ユビキチンE3リガーゼと相互作用する因子が内膜系オルガネラの形態形成に関与していると予想される。また、主要な細胞壁の構成成分が合成されるゴルジ装置について、詳細なオルガネラ形態の観察のためにゴルジ装置内のドメインを蛍光タンパク質で可視化できる植物体の作出を進めている。タバコ葉を用いた一過的発現実験によって、ゴルジ装置のcisとtransの両領域を同時に識別できることが確認でき、シロイヌナズナの形質転換が完了次第、細胞壁の各種変異体に導入する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画での要となる当該ユビキチンE3リガーゼのユビキチン化標的タンパク質の探索において、共免疫沈降実験に供する植物体をサンプリングするのに適したタイミングを、エストロゲン誘導後の経時的な蛍光タンパク質局在解析によって絞り込めたため。また、研究の推進に必要な形質転換体の作出が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で着目しているユビキチンE3リガーゼの標的タンパク質を同定するため、共免疫沈降実験およびMS解析を行う。MS解析から候補として挙がった因子について、細胞内局在解析をはじめ、当該ユビキチンE3リガーゼとの物理的相互作用をYeast two hybridアッセイ、あるいはBiFC等の方法によって検証する。また、ゴルジ装置をはじめとする各種内膜系オルガネラの蛍光タンパク質マーカーを、細胞壁のシロイヌナズナ遺伝子欠損変異体に順次導入する。
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Causes of Carryover |
人工気象器を導入予定であったが本年度に実験室の設備環境を変更しなければならない状況となり、それに伴って設置場所について再検討する必要性が生じた。そのため、その購入を次年度へと延期した。また、共同研究先等に訪問しての研究打ち合わせを実施することができなかったため、その旅費についても次年度に使用することになった。
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