2022 Fiscal Year Research-status Report
寄生植物ネナシカズラの宿主依存的道管新生と連結に必須の宿主因子の同定
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21K06235
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
西谷 和彦 神奈川大学, 理学部, 教授 (60164555)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Cuscuta / 吸器形成 / 寄生植物 / 光刺激 / 赤色光 / 成長段階 / 赤色光/遠赤色光比 / アメリカネナシカズラ |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカネナシカズラは地表で発芽後、芽生えは茎のみを伸ばし、回旋転頭運動によって宿主を探して巻きつき、吸器を形成して群落底部で最初の寄生(一次寄生)を達成する。一度寄生に成功すると、宿主上で成熟茎を伸ばし、群落の上部(キャノピー)に向かって成長しながら新たな宿主に次々と寄生する。寄生に至る段階は環境因子と宿主因子の双方により制御を受けるとため、宿主因子の解析には環境因子を正確に制御できる実験系が必須である。実験系の検討を行う過程で、寄生過程に対する青色光、赤色光、遠赤色光の作用が、これまでの定説とは異なることを見出した。従来の定説の根拠となっている研究は専ら発芽芽生えを用いていたのに対して、我々の実験系では成熟茎を用いていたことから、両者の結果の違いは芽生えと成熟茎の違いによる可能性が示唆された。そこで、この点を検証するために、アメリカネナシカズラの発芽芽生えと成熟茎の双方を用いて、青色光と赤色光、遠赤色光の光環境下で、回旋転頭運動とシロイヌナズナへの巻き付き、締め付け、吸器形成、道管連結の各過程を包括的に解析した。そうしたところ、発芽芽生えでは、従来の定説通り青色光と赤色光による寄生の全過程が促進され、赤色光では阻害されたのに対して、成熟茎では、青色光と遠赤色だけではく赤色光下でも寄生が促進された。この結果は、芽生えから成熟茎に成長段階が進行する過程で、赤色光による寄生抑制作用が軽減、解除されたことを示している。今回の発見は、群落の底部の赤色光/遠赤色光比の小さい光環境下で進む芽生えによる一次寄生は赤色光により阻害されるのに対して、赤色光/遠赤色光比の高い群落上部のキャノピーで進行する成熟茎による寄生は赤色光により阻害されないことを初めて示したもので、ネナシカズラ属の寄生戦略を解明する上で重要な足がかりになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アメリカネナシカズラの寄生に対する赤色光の抑制効果が成長段階により変化することを示し、これまでのネナシカズラ属の光応答についての定説を書き直した。今回の発見はネナシカズラ属の寄生戦略を解明する上で重要な足がかりになると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画を一部変更して、今回発見した成長段階により赤色光への応答が変化する分子メカニズムの解明に焦点をあて、トランスクリプトーム解析と4次元イメージング解析などの手法により、成長段階による寄生戦略の変化についての分子解剖を進める予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度、新規現象を発見したことにより、その解析のために研究計画を大幅に変更し、今年度予定していた計画を次年度に実施することになり、そのための物品費が不要となったことに加え、学会発表を次年度に変更したため。
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