2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06236
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 賢洋 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70361748)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 植物cAMPシグナル伝達機構 / cAMP / cAMP合成酵素 / cAMP分解酵素 / CAPE / cAMPエフェクター / cAMP結合タンパク質 / 植物cAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
cAMPは代表的な細胞内シグナル分子であり、様々な生物において生理的役割が明らかにされている。本研究は、植物から発見したcAMP合成・分解酵素(CAPE)を起点とする精子べん毛運動調節機構に着目し、ゼニゴケのゲノム情報と遺伝子組換え技術を利用して植物cAMPシグナル伝達の分子機構を明らかにすることを目指すものである。本年度は、cAMP結合ドメインを有する新奇タンパク質 (cyclic nucleotide receptor with multi-CNBDs: CRMC)を解析するにあたり、オフターゲットの可能性を排除するために、昨年度得られたゲノム編集株とは異なるgRNAによるゲノム編集株の取得を試みた。新たに2箇所にgRNAを設計し(gRNA3、gRNA4)、Cas9によるゲノム編集を行ったところ、gRNA4によってゼニゴケ雄株、雌株でゲノム編集株を得られた。今後、得られたゲノム編集株で表現型解析をすすめていく。また、前年度に試みた2種のgRNA(gRNA1、gRNA2)においても、gRNA2のみで編集が起きたことから、gRNAの位置の選択がゲノム編集の効率に極めて重要であることが明らかとなった。編集株取得のスピードアップのために、編集効率に違いをもたらす具体的な要因の解明が待たれる。CRMCに加え、本年度は、cAMP結合ドメインを有するタンパク質として、cAMP依存性タンパク質リン酸化酵素調節サブユニット(PKA-R)の変異株精子の運動性を解析した。ゼニゴケは2コピーのPKA-R遺伝子を持ち、二重変異株精子において、cape変異株精子と同様に精子遊泳が異常になった。このことから、CAPEとPKAがシグナリングモジュールとして精子遊泳を調節している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなcrmc遺伝子変異株を得られるなど、着実に研究が前進しており、残り期間において研究の発展が見込まれるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集株の取得が非常に困難であったが、取得に成功したため、表現型を集中的に解析する。並行して行っていたCRMCプロモーターGUS株とGFP-CRMC発現株の構築が進んだため、これらを用いて、組織レベルのCRMC発現部位の解析、細胞内局在(特に、精子において)を調べ、CRMCをキャラクタリゼーションする。PKAについてもさらに解析し、植物cAMPシグナル伝達の分子機構の解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
本研究成果の公表に高額な論文掲載費が予想されることに加え、本研究課題を遂行するためにcAMP量測定試薬や分子生物学実験試薬の購入費用が必要となるため。
|