2023 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答シグマ因子による光合成の新しいストレス適応機構とその進化
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21K06238
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
椎名 隆 摂南大学, 農学部, 教授 (10206039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 裕 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (30734107)
石崎 陽子 摂南大学, 農学部, 助手 (50423869)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 葉緑体 / シグマ因子 / ストレス応答 / 転写制御 / Ca2+シグナリング |
Outline of Annual Research Achievements |
葉緑体ゲノムにコードされた光合成遺伝子群は、バクテリア型RNAポリメラーゼのPEPによって転写される。その転写には核コードのシグマ因子が必要で、光合成遺伝子群の転写にはSIG2とSIG6が重要な働きをしている。一方、SIG5は、その発現がストレスやABAによって誘導されるユニークなシグマ因子である。これまでに、光化学系反応中心のD2タンパク質をコードするpsbD遺伝子上流に存在する光応答プロモーター(psbD LRP)の活性化にSIG5が特異的に関わることがわかっている。しかし、その詳細な制御機構はよくわかっていない。本研究では、ABAと明暗変化に対するSIG5とpsbD LRPの応答を詳細に解析した。 まず、ABAに対するシグマ因子群やPEP依存光合成遺伝子群の発現を詳細に解析した。その結果、ABAによってSIG2やSIG6などの主要シグマ因子の発現が抑制され、光合成遺伝子群の発現も低下することを見出した。一方、SIG5の発現はABAによって活性化され、そのターゲットであるpsbD LRPの活性はABAによって低下しないことがわかった。このことは、ABAによるSIG5発現の活性化が、ストレス化でのpsbD遺伝子の発現レベルの維持に関わる可能性を示唆している。 一方、植物を暗所に移すと、psbD LRPの発現活性が特異的かつ急速に低下する。この現象は、葉緑体のCa2+依存的ppGpp合成酵素CRSHによって制御されている可能性が示されている。本研究では、明暗による葉緑体Ca2+制御に葉緑体包膜の機械受容チャネルMSL2が関わる可能性を検証した。その結果、暗所におけるpsbD LRPの特異的活性低下にMSL2を介した葉緑体Ca2+濃度の変化が関係している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究から、SIG5のターゲットとなるpsbD LRPの活性制御と葉緑体Ca2+濃度制御の関係を明らかにする新しい方向性を示すことができた。一方、当初の目的であるpsbD LRP活性化に関わるDNA結合因子の同定の研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で明らかになった、SIG5のターゲットとなるpsbD LRPの活性制御と葉緑体Ca2+濃度制御の関係については、葉緑体Ca2+濃度の明暗応答に関わる可能性があるMSL2の解析を進め、psbD LRP活性化との関係を明らかにする。また、psbD LRP活性化に関わるDNA結合因子の同定についても、引き続き取り組む。
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Causes of Carryover |
Ca2+制御に関する新たな課題が生じたためと、一部の課題が若干遅れているためである。それらの研究のための経費を2024年度に執行する。
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Research Products
(4 results)