2021 Fiscal Year Research-status Report
緑藻スジアオノリ配偶子の微細な性差から解く、細胞間の相互認識と融合の仕組み
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21K06242
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市原 健介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (60610095)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有性生殖 / アロ認証 / 海藻 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アオノリ配偶子間の「認識」と「融合」に重要な役割をもつタンパク質の実体と機能を明らかにすることを通して、雌雄性というものがどのような構造の違いや性質の違いから始まったものであるかを明らかにすることである。当該年度は以前行ったスジアオノリ雌雄配偶子の細胞膜および鞭毛のプロテオーム解析の結果から、配偶子間の「認識」と「融合」に関与すると思われるタンパク質を探索した。アノテーション用のデータベースには雌雄配偶子の形成過程で経時的にサンプリングしたRNAseqの結果をde novo assemblyしたものを利用した。解析の結果、鞭毛からは緑藻クラミドモナスで発見された鞭毛に存在し、雌雄や種の認識に機能すると考えられているアグルチニン様タンパク質が発見された。また、雄の細胞膜に特異的なタンパク質として、植物の受精因子として知られるGEX2遺伝子のホモログも発見することができた。 このUpGEX2に対して、gRNAをデザインしCas9 RNPをPEG法により雌雄配偶子へ導入することで、複数のgex2欠損変異配偶体を得ることが出来た。雄のgex2欠損変異配偶体由来の配偶子は雌配偶子との接合子形成が全く見られないのに対し、雌のgex2欠損変異配偶体由来の配偶子は雄配偶子との間で正常に接合子形成が進んだ。このことからアオサ藻綱においても、GEX2は雄側の受精因子として機能していることが明らかになった。また現在、細胞融合因子として知られるGCS1についても複数の欠損変異体を得ることが出来ており今後表現型解析を行う予定である。さらに雌の配偶子膜から発見された膜貫通ドメインを持つEGF-domainを含むタンパク質やLLR(Leucine-Rich Repeats)を持つキナーゼ等についても欠損変異体を作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GEX2を標的としたgRNAは高い効率を示し、一度の実験で複数の変異体を得ることが出来た。異なる配列変異を持つ雄変異体でも表現型としては、同一で接合が正常に進まず、雌雄配偶子が接合子を形成出来ないことが示された。一方で雌欠損変異体では雄配偶子との接合子形成が正常に進み、胞子体を経由し、同一の変異を持つ雄変異体を得ることも出来た。これはGEX2が雄配偶子特異的に機能していることを示すものだと思われる。GCS1については当初デザインしたgRNAがうまく作用せず、複数回デザインをし直すこととなったが、最終的には複数の欠損変異体を得ることが出来た。これまでのところCas9を利用したゲノム編集により、標的とした遺伝子の欠損変異体の作出はうまく行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り、GEX2へのGFP等のタグとなる配列を付加した変異体の作出を目指す。これまでにも予備的に50bpほどのホモロジーアームを付加したGFPの挿入を目指した実験を行ったが、現状では変異体が得られていない。ゲノム編集を利用した外来遺伝子のゲノムへの挿入には複数の手法が考案されていることから、今後は一本鎖DNAを使用した方法を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に参加予定だった学会について、新型コロナウイルスの影響でオンライン開催に変更されたことで、旅費にかかる経費が減少したため、次年度使用額が生じた。次年度も学会の現地開催については流動的になる可能性もあることから、実験を進めているゲノム編集等の試薬、gRNAの購入等に当てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)