2021 Fiscal Year Research-status Report
陸上植物に保存された葉緑体ペプチドグリカン関連タンパク質SLHの解析
Project/Area Number |
21K06251
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
武智 克彰 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (70515501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 博嘉 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (70242104)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 葉緑体内部構造 / 葉緑体ペプチドグリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
PpSLHsタンパク質の局在及び機能ドメイン解析 4種のPpSLHsの推定アミノ酸配列から,推定葉緑体移行配列,天然変性領域,膜貫通ドメイン,SLHドメイン,coiled-coil構造をもつことが推測された。移行配列とsGFPを用いた局在解析の結果,葉緑体に移行することは明らかになっていたものの,葉緑体内での局在は不明だったので,局在解析を行った。PpSLHsは膜貫通ドメインを持つことから,ペプチドグリカン(PG)と関連するのであれば,内包膜を貫通し,包膜間のPGと相互作用していると予想される。そこでPpSLHsの全長とsGFPの融合タンパク質を発現させ,細胞内での局在を解析したところ,PpSLHsは葉緑体周辺部にドット状に局在していた。次に各ドメイン構造をそれぞれ除いたPpSLHsとsGFPの融合タンパク質を発現させたところ,膜貫通領域を除くとドット構造は消失し,包膜間付近に一様に局在することから,膜貫通ドメインの存在によって,包膜上に集積することが分かった。また膜貫通領域からC末端までの配列を除くと,包膜付近に局在が見られなくなったことから,これらのドメイン内で他のタンパク質と相互作用し,包膜間の局在に関与しているのではないかと考えられた。またPpSLHs全長sGFPを,PpSLH4重遺伝子破壊ラインで発現させると,葉緑体内の巨大小包膜上にもシグナルが観察された。このことから巨大小胞膜は,包膜由来の可能性が示唆された。 AtSLHsによるPpSLH4重遺伝子破壊ラインの相補解析 シロイヌナズナに保存された3種類のAtSLHsをPpSLH4重遺伝子破壊ラインで一過的に発現させたところ,AtSLH3では,PpSLH4を発現させた時と同様に,異常葉緑体数の減少が確認された。シロイヌナズナ変異体では,葉緑体の異常は観察されていないが,AtSLHは機能分化している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒメツリガネゴケのPpSLHsの葉緑体内局在とタンパク質の各ドメインの機能を,sGFPを用いて解明し,おおよその局在の見当を付けることができた。バクテリアにおいて,SLHドメインを持つタンパク質は,ペプチドグリカン(PG)と結合することが知られているが,初年度の目標であった,PpSLHsとPGの結合解析までは行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,ペプチドグリカン(PG)とPpSLHsとの結合能を解析する。AtSLH3も,PpSLH4重遺伝子破壊ラインの異常葉緑体表現型を相補できたことから,PpSLHsがPGと結合するのであれば,AtSLHも結合するのかもしれない。また,エストラジオールによる条件的遺伝子発現系を用いて,PpSLH4重遺伝子破壊ラインでPpSLHsの発現を誘導することで,異常葉緑体の小胞の消長がどのように生じるのかを,詳細に観察することで,小胞形成のメカニズムにせまりたい。またPpSLHs変異体は,異常葉緑体を生じるものの,植物の生育には致死的な影響は見られない。コケは環境ストレスに対して,頑強な性質をもつことが知られており,そのために生育への影響が強くでていないのかもしれない。そこで,塩ストレスや浸透圧ストレス,または植物のストレスホルモンであるABAを処理することにより,小胞の消長を調べる。また,ヒメツリガネゴケのPG分解系遺伝子破壊ラインでは,いずれも巨大葉緑体が生じることを明らかにしているが,これらの変異体においても,PpSLHs4重遺伝子破壊ラインと類似した葉緑体小胞が観察される。このことは,PGとSLHsの関連を示すものであり,PGと小胞の形成には関連があるのかもしれない。そこで,3種類のPG分解系遺伝子破壊ラインで,PpSLHs遺伝子を過剰発現させることで,巨大葉緑体内の小胞が減少するかを調査する。また,異常葉緑体内の小胞膜及び小胞内部構造が,葉緑体のどの部位由来なのかを明らかにするために,葉緑体の外包膜,内包膜,包膜間,チラコイド膜,ストロマに局在することが分かっているタンパク質をsGFPでラベルし,PpSLH4重遺伝子破壊ラインに導入することで,小胞の由来を明らかにしたい。
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