2021 Fiscal Year Research-status Report
プロラクチンの中枢神経系への新規作用:神経新生を介した生殖活動への寄与
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21K06256
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
蓮沼 至 東邦大学, 理学部, 准教授 (40434261)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アカハライモリ / 間脳 / 視索前野 / 第三脳室 / 神経新生 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
有尾両生類アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)の成体では、大脳側脳室周囲および間脳視索前野で年間を通して細胞増殖が生じている。本年度は間脳視索前野の増殖細胞の神経細胞への分化を定量的に解析した。5-エチニル-2'-デオキシウリジン(EdU)投与24時間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月経過後に脳を採取し、神経幹細胞マーカーであるSox2、神経細胞マーカーであるNeuNに特異的な抗体による蛍光免疫染色とEdUを可視化する方法を組み合わせた多重蛍光染色を行い、成体アカハライモリ間脳視索前野における増殖細胞の性質と分化運命を検証した。EdU投与後24時間では、EdU陽性細胞は第三脳室周辺で見られ、EdU陽性細胞のほとんどはSox2免疫陽性であったが、EdU投与後2週間にはSox2免疫陽性のEdU陽性細胞は大幅に減少した。一方、NeuN免疫陽性のEdU陽性細胞は緩やかに増加し、EdU投与後3ヶ月には、ほとんどのEdU陽性細胞は第三脳室から離れ、EdU陽性細胞の半数以上がNeuN免疫陽性であった。以上より、イモリ間脳視索前野で増殖している細胞は神経幹細胞であり、第三脳室から体側方向へ移動して多くは神経細胞に分化することが明らかになった。また、下垂体前葉ホルモンであるプロラクチン(PRL)の間脳視索前野の細胞増殖への作用が、直接作用か間接作用かを明らかにすることが目標の一つであるが、昨年度は主として間接作用の可能性を探った。イモリ脈絡叢に発現するinsulin-like growth factor (IGF)-I, IIについてPRLがその発現に影響を与えるかを解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下垂体前葉ホルモンであるプロラクチン(PRL)がイモリ間脳視索前野の細胞増殖を直接的または間接的に促すかについてまだ確定的な結果を得られていない。間脳視索前野の神経幹細胞にPRL受容体が発現しているか否かを解析する必要がある。PRLが脈絡叢におけるinsulin-like growth factor (IGF)-I, IIの発現を介して、間脳視索前野の細胞増殖を促す経路も想定している。PRLが脈絡叢のIGF-I, IIの発現を増強させる傾向のデータが得られているがさらに精度を高める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
PRLが視索前野の細胞増殖を直接的または間接的に促すかを明らかにすることを主たる目標とする。PRLの直接作用としては視索前野の神経幹細胞にPRL受容体が発現しているかを明らかにするとともにニューロスフェアアッセイの系の確立を目指し、in vitroで神経幹細胞の培養を可能にし、PRLが神経幹細胞の増殖を促すかを検証する。また、PRLの間接作用としては、IGF-I, IIをはじめとした脈絡叢に発現する細胞増殖因子を介した作用を想定するが、候補となる細胞増殖因子の選抜には下垂体除去イモリと偽手術イモリの脈絡叢をサンプルに、RNA-seq解析により網羅的に発現を解析することも検討する。
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