2022 Fiscal Year Research-status Report
性決定遺伝子発現ニューロンによるターゲット細胞の非細胞自律的な性差形成機構の解明
Project/Area Number |
21K06260
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木村 賢一 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80214873)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | キイロショウジョウバエ / 性決定遺伝子 / fruitless / 雄特異筋 / 誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエのオス腹部第5体節には、性特異的に存在する筋肉MOL(Muscle of Lawrence)がある。このオス特異筋の形成は、それを支配する性決定因子Fru発現運動ニューロンにより誘導されることが知られている。昨年MOL誘導に関わるリガンドおよびレセプターのスクリーニングを行い、候補因子の探索を進めたところ、運動神経におけるActivinβ(Actβ)のノックダウンがMOL形成を抑制することを見いだした。そこで本年度は、MOL誘導メカニズムにおけるActivinシグナル系の関与を検証した。まず、運動神経においてActβをノックダウンした結果、オスのMOL形成は抑制された。次に、運動神経においてActβを強制的に発現誘導してやると、オスでは第5体節以外の体節も、メスでも腹部の各体節でMOL様筋肉が形成された。Actβリガンドは、baboとpuntというレセプターに受容され、細胞内でSmox(あるいはdSmad2)と呼ばれる転写因子を介して、ターゲットの遺伝子発現を調節していることが知られている。そこで、これらレセプター遺伝子のノックダウンをmyoblastに誘導したところ、オスにもかかわらずMOLの形成が抑制された。また、baboの活性型を筋肉系に強制発現すると、オスにおいて第5体節以外の体節にも大きなMOL様筋肉が誘導された。次に、Smoxのノックダウンを筋肉系で引き起こしてやるとMOL形成は抑制され、また活性型のSmoxを強制発現させると、オスの他の体節にMOL様筋肉が誘導されることがわかった。以上の結果から、本年度の研究においてMOL誘導因子としてActivinβが同定され、このシグナルはActivinシグナル伝達系を通じてMOLの誘導を引き起こすと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、Activinシグナル系がMOL誘導に関与することを明らかにすることができた。従来、全く不明であったMOL誘導因子を同定し、そのシグナル伝達系を解明できたことは、大きな前進である。次年度の計画を進める上で大きな材料を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)Activinシグナル系が作用する発生時期について、温度感受性Gal80を用いて特定する。また、同定されたActivinシグナル系の因子に関して、その発現パターンを抗体染色やActβ-Gal4をドライバーとして用いたマーカーの発現により明らかにする。 2) MOL支配運動神経をモニターするため、またそれを遺伝的に操作するために、MOL支配運動神経で特異的に発現するfru-Gal4系統を探索する。そのために、fru遺伝子の調節領域の断片をもつGal4系統を取り寄せ、その発現をGFPでモニターし、MOL支配運動神経で発現する系統をスクリーニングする。 3) ActβやそのレセプターのノックダウンによりMOL形成に異常を引き起こした際、形成過程でどのような変化が運動ニューロンやmyotubeに起こっているか、ライブイメージング法を適用し明らかにする。 4)fru遺伝子のノックダウンや強制発現によりMOL形成異常となった時、Activinシグナル系の因子の発現パターンが変化しているかどうか調査し、誘導因子としてのActivinシグナル系が性決定因子Fruのもと調節されているかどうか明らかにする。 5)Activinシグナル伝達系の下流で作用するMOL分化制御因子の解析を進めるため、myotubeの伸長に関わるような遺伝子や腱の形成に関わる遺伝子を中心にスクリーニングを行う。
|
Causes of Carryover |
(理由)2022年度の年度末の謝金業務が1日なくなったため。 (計画)2023年度品目別内訳として、物品に256,476円、旅費0円、人件費・謝金500,000円,その他250,000円、計1,006,476円を予定している。
|
Research Products
(3 results)