2022 Fiscal Year Research-status Report
The central oxytocin and vasopressin system regulating mouse sexual partner preference
Project/Area Number |
21K06274
|
Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
近藤 保彦 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (00192584)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 性行動 / 前脳 / オキシトシン / バソプレシン / 嗅覚系 |
Outline of Annual Research Achievements |
バソプレシン1b受容体(V1bR)は、雌の性行動に特徴的な反応であるロードーシスの発現を強く促進しており、V1bRの欠損はロードーシス発現を著しく障害する。一方、バソプレシン1a受容体(V1aR)は、V1bRと反対に雌のロードーシスを抑制しているのだが、V1aRを単独で欠損させてもその効果はほとんど検出されないが、V1bRと同時に欠損させることによってV1bR欠損によるロードーシスの低下を回復させることができることが分かった。一方、オキシトシン受容体(OTR)は、欠損させてもロードーシスにはほとんど影響しないが、雄に対する拒絶行動が増加する一方、雄から遠ざかろうとする行動自体も低下する。正常な雌は、交尾の後に雄と距離を置くことによって交尾のペースを調節し(ペース取り行動)、結果としてこれが繁殖効率の上昇につながることが報告されているが、OTRを欠損した雌はペース取り行動ができないため雄の近傍に留まり、結果として雄の接近に対して拒絶する行動が上昇したものと理解することができる。 一方、雄マウスは同種の雄臭と発情雌臭を同時に提示する選好性テストにおいて、発情雌臭に強い選好性を示すが、我々はオキシトシンKOマウスがこの選好性を消失していることを報告しているが、これをOTR欠損マウスで確認したところ、OTRの欠損は発情雌臭に対する選好性には影響しないことが分かった。そこでこれらのマウスにV1bR拮抗剤(V1aRant)を投与したところ、コントロール群であるHetro雄には効果がなかったが、OTR-KOマウスの選好性は消失させることが分かった。したがって、雄マウスの発情雌臭に対する選好性は、オキシトシンがOTRではなくV1bRに作用することによって調節されていることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
―昨年、新たに開発した雌マウスの性行動測定装置を用いて、バソプレシンv1a受容体、v1b受容体、そしてv1a・v1b両受容体のKOマウス、並びにオキシトシン受容体KOマウスにおける雌性行動の実験結果を論文に投稿したところ、いくつかの問題点が指摘された。そのために昨年は、データを追加し見直しを行ったため、新たな実験はその分、抑制されるとなった。しかしながら、上述したOTR欠損の雌マウスの性行動について記載したように、OTR欠損は単に拒絶行動を増加させるだけでなく、雌マウスの交尾ペース取り行動が障害されていることが明らかになった。現在、この点を含め論文を訂正中であり、数週間以内にも再投稿の予定である。 また、研究業績後半に記したように、雄マウスの嗅覚選好性に関しても新たにオキシトシンの役割が明らかになってきており、脳内のオキシトシン系とバソプレシン系は相互に影響し合い、単独では議論できないことが明らかになってきた。したがって、これまで知られてきたオキシトシン・バソプレシンの社会行動における役割についても、これらがクロストークして行動を制御している可能性についてさらに吟味する必要性が明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
バソプレシンv1b受容体が雌マウス性行動のロードーシス発現に極めて重要な役割を果たしていることが明らかになったため、脳のどの領域に発現するv1b受容体が雌の性行動制御に関わっているかを明らかにすることをプロジェクトの最優先課題と方向づけた。そこで、米国NIHからv1bとcre組換え酵素を共発現するv1b-creマウスを入手し、研究を進めるべく繁殖中である。今後、このマウスにアデノ随伴ウィルスをベクターとして遺伝子導入を行い、性行動に関わるバソプレシン受容体の脳内領域を特定するとともに、その神経投射を解析していく予定である。 さらに雌マウスの雄臭に対する選好性は、学習性のものであることも明らかになってきた。現在、この行動についても解析を行っていく計画を立てている。
|
Causes of Carryover |
年度末で残高が端数となり、必要なものを購入するに十分でなかったため、翌年度に改めて購入することにしたため。
|
Research Products
(6 results)