2021 Fiscal Year Research-status Report
温度環境変化への応答を担う新規の温度受容体候補SRHの神経生理学的解析
Project/Area Number |
21K06275
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
太田 茜 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員 (50410717)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 温度受容体 / Gタンパク質共役型受容体 / サーモセンサー分子 / 線虫 / 低温耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度は生物の生存に必須の環境情報である。感覚神経の温度受容体としてTRPチャネルが知られているが、TRP以外の温度受容体については未解明の点が多い。本研究者は、これまでに温度情報が視覚と同様に三量体Gタンパク質(Gα)で伝達されることや(Ohta, Ujisawa et al., Nature commun, 2014)、DEG/ENaC型のメカノ受容体であるDEG-1が温度受容体として機能し、低温耐性を正に制御することを見つけた(Takagaki, Ohta et al., EMBO reports, 2020)。本研究では、Gα上流のGタンパク質共役型(GPCR)の温度受容体の単離を目指す。これまでに、新規の温度受容体候補として、GPCR SRHを単離したため、この分子が本当に新規サーモセンサー分子として機能するのかを生理学的に明らかにすることを目的として解析を進めている。また、遺伝学的解析から新規の温度情報伝達分子の同定も進めている。 当該年度は、SRHが本当に温度受容体として機能するかを調べるために、GPCR SRHを温度に応答しない線虫頭部の化学受容ニューロンに異所的に発現させ、温度に応答するようになるかをカルシウムイメージング法で解析した。温度に応答しない線虫頭部の化学受容ニューロンにGPCR SRHと、遺伝子によってコードされるカルシウムインジケーターであるGCaMP8を発現させた系統に温度刺激を与え、化学受容ニューロン内のカルシウムイオン濃度の変化を測定したところ、温度に反応するようになることが分かった。このことから、GPCR SRHが温度受容に関わる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新規の温度受容体の単離を目指す。これまでに、新規の温度受容体候補として、GPCR SRHを単離したため、この分子が本当に新規サーモセンサー分子として機能するのかを遺伝学的解析と生理学的解析から研究を進めており、また、遺伝学的解析から新規の温度情報伝達分子の同定も進めている。当該年度において、GPCR SRHを温度に応答しない化学受容ニューロンに異所的に発現させ、温度に応答するようになるかをCa2+イメージング法で解析できたため、予定通りといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
神経系における温度受容に関与する分子として、TRP型チャネルが知られているが、それ以外の分子には未知の点が多い。本研究では、比較的解析の進んでいない三量体Gタンパク質を介した温度情報伝達機構の解明、特にGαの上流で機能する未知の温度受容体の単離を目指し下記の解析を進めている。低温耐性に関わる温度受容ニューロンASJでは、哺乳類の視覚・嗅覚系と同様の三量体Gタンパク質、グアニリル酸シクラーゼ、ホスホジエステラーゼ(PDE)、cGMP依存性チャネルが温度受容に関与することを見つけたが、一般的に、感覚ニューロンにおいてGαはGPCRにより活性化されることから、Gαの上流にはGPCR型の温度受容体(GPCR)が存在する可能性が考えられる。新規の温度受容体候補としてSRHを見つけたため、本研究ではSRHが新型のGPCR型サーモセンサー分子であるかを解析している。当該年度以降は、(1)SRHが実際に温度を受容しているかを、アフリカツメガエルの卵母細胞や昆虫の細胞系(S2等)をもちいてGPCRを強制発現させ生理学的に解析することを計画している。(2)SRH以外の温度受容体候補GPCRに関しても、温度受容体であるかを遺伝学的解析および生理学解析から検証することを計画している。また、(3)遺伝学的解析から温度受容情報伝達系に関わる新規の分子の同定も目指している。次年度は主に(1)を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍による勤務制限などにより、予定よりも物品の消費量がやや少なかったため、少額であるが次年度使用額が生じた。
|