2021 Fiscal Year Research-status Report
社会性昆虫における社会的同調に関与する時計遺伝子の探索
Project/Area Number |
21K06276
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
守山 禎之 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30707394)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会性昆虫におけるコミュニケーションと生体リズムの同調の詳細なメカニズムは未解明であり、個体に組み込まれた測時機構である概日時計に、「社会」などの集団生活における他個体との相互作用がどのような影響をおよぼすのかは明らかになっていない。本研究では、社会的同調と時計遺伝子の直接の関与を明らかにすることを目指している。初年度は活動リズムの個体別計測、およびコロニー内のワーカー同士を用いて、個体間のコミュニケーションが相互の活動リズムへどのような影響を与えるかの解析を行った。順次計測は進めているが、当初予定していた十分な個体数を確保できなかったため、行動実験の解析が遅れている。平行して行っているRNAシークエンシングによる時計遺伝子の解析では、現在までに時計遺伝子period,Clock,cryptochrome,vrilleおよび時計関連遺伝子pidment-dispersing factorと考えられる部分配列が得られた。期待していた時計遺伝子と時計関連遺伝子の配列が得られたが、遺伝子発現解析に用いる予定であったリファレンス遺伝子の配列解析が進んでいないため、遺伝子発解析よりも先ず、時計遺伝子によるRNA干渉を用いた行動解析に着手した。当初の実施計画通り経口投与の方法で二本鎖RNAを導入し、活動リズムを計測した。まずは多くの昆虫で周期的に発現しておりリズム発振に重要であると考えられるperiod遺伝子を用いてRNA干渉実験を行ったが、期待していた活動リズムの消失もしくは変調は観察されなかった。これは正しく二本鎖RNAの導入されていない可能性が考えられ、今後は実施計画にも記載の通りインジェクターを用いた導入方法に切り替えて進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
活動記録装置の導入が遅れたことと、行動規制により採取予定地へ十分な回数赴くことができず予定の個体数が確保できなかったため、行動実験の解析が予定よりやや遅れている。しかし、RNAシークエンシングの結果、複数の時計遺伝子と時計関連遺伝子の部分配列を得られたことは、今後の研究推進の足掛かりとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
①遅れている行動実験の解析を進める。まずは現在までに得られている行動実験のデータ解析および追加の活動記録装置を早期導入する。順次、個体間のコミュニケーションが活動リズムへ与える影響の解析へと移る。②RNAシークエンシングは引き続き解析を続け、他の時計遺伝子の配列取得を目指す。リファレンス遺伝子の配列が得られれば、まずは昨年度に取得したperiod,Clock,cryptochrome,vrilleの配列を用いてそれらの発現解析に移る。配列未取得の時計遺伝子については、配列が得られ次第発現解析を行う。③RNA干渉実験は、経口投与ではなく、インジェクターを用いて注射により個体に導入する方法に切り替えて行う予定である。④得られた時計遺伝子の配列からプローブを作製し、in situ ハイブリダイゼーションを用いてクロオオアリ脳内の時計遺伝子発現細胞の所在を明らかにする。①、②の解析を平行して行い、順次③、④と進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
予定購入金額と実際の納入金額の差が生じるため、また納期の遅れにより次年度使用額が生じた。生じた差額は次年度の消耗品費として使用する。
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