2022 Fiscal Year Research-status Report
クロララクニオン藻のピレノイドで働く分子機構の進化
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21K06285
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平川 泰久 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40647319)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ピレノイド / 葉緑体 / 二酸化炭素濃縮機構 / 藻類 / 液-液相分離 / オルガネラ進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの真核藻類は、二酸化炭素とその固定酵素であるルビスコを葉緑体内の一か所に集めることで、効率的に二酸化炭素固定を行っている。これは生物物理的な二酸化炭素濃縮機構と呼ばれ、その中心にはルビスコが高密度に集積したピレノイドが存在する。ピレノイドは包膜をもたず、タンパク質の液液相分離により形成されることがモデル緑藻のクラミドモナスで報告されている。しかし、他の多くの真核藻類でピレノイドを構成するタンパク質やその構築メカニズムは不明のままである。本研究では海産の単細胞藻類であるクロララクニオン藻を用いて、ピレノイドで働く分子機構の解明を目指している。2022年度は、単離ピレノイドのプロテオーム解析で検出されたピレノイド候補タンパク質の細胞内局在をGFPタグを用いて解析し、約30個のタンパク質の細胞内局在を明らかにした。その中で、ルビスコの液液相分離に関与すると思われるリンカータンパク質において、特異的抗体の作成を行い、ルビスコとの結合能を共免疫沈降法で確認した。また、ルビスコの活性化因子と思われるタンパク質において、リコンビナントタンパク質を用いた活性化実験を行った。これらの結果、クロララクニオン藻のピレノイドで機能する分子機構の一端が見えてきた。並行して、本研究で用いているクロララクニオン藻(Amorphochlora amoebiformis)の核ゲノム配列の解読も進めた。これまで本種では核ゲノムの解読ができていなかったが、ロングリードシークエンサー(oxford nanopore)を用いることでゲノム配列決定を行った。これにより、遺伝子ノックダウン技術の開発に進むことができるようになる。以上の研究成果の一部は、国内学会のシンポジウムで報告済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目に続き、順調に研究を進めることができた。本研究の目的の一つである「ピレノイド構築に関わるタンパク質の同定」に関しては、主要なものを発見できたと考える。これまで難航していたAmorphochlora amoebiformisの核ゲノムも概ね解読することができたため、遺伝子改変技術の開発に進むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
クロララクニオン藻で発見したルビスコリンカー候補タンパク質を用いて、試験管内でのピレノイドの再構築実験を行う。具体的には、GFPを融合したリコンビナントタンパク質を用いて、バッファー中で液液相分離が引き起こされるかを蛍光顕微鏡により観察する。また、ピレノイドの再構築実験やルビスコの活性化実験では、大量に精製したルビスコタンパク質が必要になる。より多くの細胞を培養し、ルビスコを精製する系の確立を目指す。解読したゲノム配列情報を基に、CRISPR-Cas9によるゲノム編集ツール、および相同組換えを用いた遺伝子ノックダウンツールの開発を進め、ピレノイド関連遺伝子の機能解析を目指す。
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Research Products
(3 results)