2023 Fiscal Year Annual Research Report
進化的感覚器喪失に起因する神経回路変化を実験的に再現する
Project/Area Number |
21K06298
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
守屋 敬子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (70392371)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鋤鼻系 / 霊長類 / マーモセット / 扁桃体皮質核 / 副嗅球 |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類には発達した鋤鼻器を持つキツネザルの仲間から、鋤鼻器を失ったヒトを含めた類人猿や旧世界ザルまでが存在する。進化の過程で、末梢器官である鋤鼻器の変化が脳へ及ぼした影響と神経回路変化を確認する目的で、かろうじて鋤鼻器の残っているコモンマーモセットを用いて鋤鼻系神経回路の解析を行った。 マウスの鋤鼻系は、副嗅球へ到達したケミカルな刺激が扁桃体内側核や分界条床核、および扁桃体皮質核へ送られ、そして扁桃体皮質核後部は副嗅球顆粒細胞層にフィードバック入力を返している。この事から、扁桃体皮質核後部からの順行性および逆行性投射を確認することで、鋤鼻系に相当する神経回路を確認できると考え、コモンマーモセットの扁桃体皮質核に神経トレーサーであるビオチン化デキストランアミン(BDA)およびコレラトキシンサブユニットB(CTB)を注入し、神経回路可視化を行った。 その結果、扁桃体皮質核からの嗅球への投射をBDAの可視化で確認したところ、マウス同様主に副嗅球の顆粒細胞層に見られた。逆にCTBにて入力細胞を可視化したところ、嗅球領域では、副嗅球の後半に及ぶ僧帽房飾細胞が可視化され、さらに主嗅球の内側の一部の僧帽または房飾細胞が可視化された。 このことにより、マウスではほとんど見られない主嗅球から扁桃体内側核後部への直接投射の存在が示唆された。これは鋤鼻器の退化に伴い、主嗅球からの入力に頼る神経回路への変遷であると考えられる。 しかし、現時点では十分な個体数の観察ができておらず、神経トレーサー入力部位の詳細な解剖学的確認も必要であるため、今後さらに解析を必要とする。
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Research Products
(1 results)