2021 Fiscal Year Research-status Report
「消化管が退化した自活性線虫」の分類学的位置と寄生性の起源
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21K06299
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
嶋田 大輔 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (30768445)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 線形動物 / 自活性線虫 / 寄生性線虫 / 消化管 / 分類学 / 標本 / 新種記載 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,世界的にも記録の少ない「消化管が退化した自活性線虫」の標本を網羅的に収集し,複数の分類群にわたると考えられるそれらの系統的位置を解明し,また同様に消化管が退化している一部の寄生性線虫との系統関係をも解明することである. そのため2021年度には,1.既存の標本約10,000点から消化管退化線虫を選別する,2.消化管退化線虫の報告がある国内の海岸で採集調査を行う,3.消化管退化線虫および通常の消化管を持つ線虫の形態観察に基づく種同定と塩基配列決定を行う,の3点を予定していた. 1については,国内外の既存標本およそ6,000個体を観察し,消化管が退化した自活性線虫4属8種,寄生性線虫3属3種を発見した.その中には過去に世界から2例しか報告がなく再入手は困難と考えていた属が含まれており,予定外の成果といえる. 2については,新型コロナウイルス感染症の影響で一度も実施できず,計画の見直しが必要である. 3については,同じく新型コロナウイルスの影響で研究環境の構築に大幅な遅れが生じたことにより,消化管が退化した寄生性線虫1種,および比較対象とする消化管を持つ自活性線虫数種のみの実施にとどまった.しかし,寄生性線虫はこれまでに報告のない宿主から得られたものであったため,簡易的な系統解析を含む論文を投稿中である.また,消化管を持つ自活性線虫の中にも複数の未記載種が確認されたため,一部は2021年度中に新種として論文公表を行い,残りも論文を投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により,初年度に行う予定であった作業は十分に実施できていない. 1については,観察を終えた標本は当初予定の6割ほどである.しかし,当初の想定以上に多数の消化管退化線虫が見つかっていること,消化管退化線虫の判別自体は容易でありこれからペースアップが可能であることから,研究計画への影響は比較的小さいと考えられる. 2については,採集調査をまったく実施できず大幅な遅れが生じているため,2022年度中に行う予定である. 3については,研究環境の構築にも制限がかかったことにより,やはり大きな遅れが生じている.しかし,今年度は研究環境が整い実験を十分に行えるようになったこと,もともと2022年度以降も実施する予定であったことから,遅れを取り戻せる範囲と判断している. 以上の3点を総合して,計画に遅れは生じているものの,計画自体を変更するような重大な遅れではないと判断し,(3)やや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画のとおり2022年度も1~3の作業を引き続き実施して,系統解析のための十分なデータを集める予定である. 1についてはまだ未観察の標本が多数残っていることから,特に優先的に観察を進めることで遅れを取り戻す. 2については,北海道・関東・九州の海岸で予定していた調査を実施する.ただし,今年度も遠隔地への出張が難しいようであれば,関東地方での調査のみに計画を縮小することも検討する. 3については2023年度以降も継続する予定のため,2022年度は1と2を重点的に行い,種数と標本数を増やすことを優先する計画である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により調査が実施できなかったため,旅費分を全額繰り越した.また,同じ理由で実験計画に遅れが発生し年度内に納品が難しい状況であったため,物品費・その他をそれぞれ半分程度繰り越した. 旅費については,2021年度に行う予定であった調査を2022~2023年度中に行う予定であり,使用予定額に変更はない. 物品費・その他についても,研究計画自体に変更はないため,20221年度中に購入する予定であった物品を2022年度に購入することで計画通りに使用する.
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Research Products
(1 results)