2021 Fiscal Year Research-status Report
着生基質の違いが海藻類の分散能力及び地理的遺伝構造に与える影響の解明
Project/Area Number |
21K06304
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
羽生田 岳昭 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 助教 (40379334)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 地理的遺伝構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋生物の地域集団間の遺伝的分化の程度や種内の地理的遺伝構造には、分散能力の違いが大きな影響を及ぼすことが明らかになっている。また、海藻類が着生する基質の違いが地理的遺伝構造の違いに影響を及ぼ可能性が示唆されているものの、未だ不明な点が多い。本研究は、日本沿岸に広く分布し近縁種間で主な着生基質が異なる海藻類を対象として、遺伝的多様性の違いを基にそれぞれの種の分散能力や地理的遺伝構造を明らかにするとともに、着生基質の違いがもたらす影響を明らかにすることを目的とする。 具体的な研究項目は、1)対象とする海藻類の採集、2)塩基配列を基にした地域集団間の遺伝的多様性の解析、3)培養条件下におけるホンダワラ類への着生能力の比、4)遺伝的多様性をもとにした分散能力や地理的遺伝構造の解明、及び着生基質の違いがもたらす影響に関する考察、の4つである。 令和3年度は、日本各地において褐藻フクロノリ属3種(Colpomenia claytoniae, C. peregrina, C. sinuosa)を採集し、ミトコンドリアゲノムのcox3遺伝子及びatp6遺伝子の塩基配列を決定した。C. claytoniaeは11、C. peregrinaは20、C. sinuosaは12のハプロタイプの存在が明らかとなり、それぞれ種内に2から3の遺伝的グループの存在が示唆された。また、3種のうちC. peregrinaは他の海藻類などに着生していることが最も多く、C. claytoniaeについても岩だけでなく他の海藻類に着生した個体が確認された。その他、紅藻類のキブリイトグサについても日本各地で採集を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
褐藻類(フクロノリ属)の採集や塩基配列決定については当初の予定通り順調に進んでいるものの、紅藻類とアオサ藻類の採集が不十分である。また、セイヨウハバノリ属などの培養株の確立が予定通り進んでいないため、達成度としては不十分といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までにサンプルが得られていない地域を中心にサンプリングを行い、ミトコンドリアゲノム領域の塩基配列決定を進める。また、セイヨウハバノリ属などの培養株の入手と実験系の確立を進める。
|