2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation on "meiofauna paradox" with using echinoderid kinorhynchs
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21K06305
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 博史 九州大学, 基幹教育院, 助教 (80750330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 圭 九州大学, 基幹教育院, 助教 (60528256)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メイオベントス / メイオファウナパラドックス / 動吻動物 / トゲカワムシ / 分散 / 集団遺伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、研究代表者自身での採集調査を断念し、研究協力者への代理採集を依頼し、瀬戸内海~玄界灘産サンプル、および東京大学三崎臨海実験所にて採取された泥サンプルを得た。この中から分子実験に使用可能な状態で、多数の動吻動物を得ることに成功した。この内、瀬戸内海サンプルにはEchinoderes rexが、三崎臨海実験所サンプルにはEchinoderes sensbilisが含まれており、本研究の解析に利用すべく、DNA抽出を行った。 また研究代表者が研究開始前に採集済みであったサンプルを精査し、青森県浅虫・熊本県天草・和歌山県白浜サンプル(E. sensibilisおよびE. rex)、北海道奥尻島・静岡県下田・鹿児島県種子島・沖縄県沖縄本島・渡嘉敷島サンプル(E. sensibilis)、瀬戸内海・日本海(北海道沖)・東シナ海(奄美大島沖)サンプル(Echinoderes tchefouensi)のDNA抽出を実施した。 令和3年度は各種の遺伝構造の概観を知るため、特にCOI遺伝子塩基配列決定を優先して行った。先行研究データを合わせると、現在E. sensibilis 12集団220個体、E. rex 4集団28個体、E.tchefouensis 3集団3個体が解析に使用可能である。この内、E. sensibilisでは、COI遺伝子塩基配列について、集団内・集団間で程よい遺伝的分化が見られている。一方でE. tchefouensisではCOI遺伝子を見ると、集団間で遺伝的分化が大きく、複数の隠蔽種を含む可能性が示唆されている。反対にE. rexではCOI遺伝子の集団内・集団間遺伝的差異が非常に小さく、集団的遺伝構造を明らかにするためには、別遺伝子マーカーを使用する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は臨海実験所や調査船航海を利用し天草、瀬戸内海、熊野灘での採集を実施予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、実験所の外部利用や航海参加が制限され、研究代表者自らの採集調査を実施できなかった。そこで研究協力者に代理サンプリングを依頼し、冷凍泥を九州大学に輸送後、研究代表者によって対象トゲカワムシのソーティングを実施した。この結果、広島大学練習調査船にて採集された瀬戸内海~玄界灘産サンプル、および東京大学三崎臨海実験所にて採取された泥サンプルから、それぞれEchinoderes rexならびにEchinoderes sensbilis個体を多数得ることができた。得られた個体はDNA抽出・COI塩基配列を決定済みである。 また、研究開始前に採集済みであった個体からも、DNA抽出および塩基配列決定を試みた。北海道奥尻島・日本海(北海道沖)・青森県浅虫・静岡県下田・和歌山県白浜・瀬戸内海・熊本県天草・鹿児島県種子島・沖縄県沖縄本島・渡嘉敷島サンプル・東シナ海(奄美大島沖)サンプルから対象種であるE. sensibilis、E. rex、E. tchefouensisをピックアップし、DNA抽出・COI配列決定も実施した。この内、一部の個体はDNAが劣化しておりデータが得られなかった。 本年度はミトコンドリアCOI遺伝子を中心に配列決定を実施したが、。現在得られている塩基配列データを概観すると、E. sensibilisでは、集団内・集団間で程よい遺伝的分化が見られており、COI配列で解析を進める事が適当であるように見受けられる。一方でE. tchefouensisでは集団間で遺伝的分化が大きく、複数の隠蔽種を含む可能性が示唆されている。反対にE. rexでは遺伝的差異が非常に小さく、別遺伝子マーカーの使用を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は採集調査が困難であったため、令和4年度は採集調査に注力する。特に日本海側はサンプリング地点・個体数ともに乏しいため、重点的な調査を実施する必要がある。そこで本年度は、新潟大学佐渡臨海実験所、島根大学隠岐臨海実験所を訪問し、日本海側の潮間帯~浅海にてトゲカワムシ科動吻動物の採集調査を実施予定である。またこれに加えて、令和3年度に調査に赴けなかった九州大学天草臨海実験所を訪問し、採集調査を行う。採集調査で得られた個体からは順次、DNA抽出を行う。 当初の計画では、令和4年度は韓国産サンプル調査を実施する計画であった。しかし韓国においては、年始以降、新型コロナウイルス感染症の感染が急速に広まっている。4月現在は大きな感染ピークを超えているようだが、未だ注意が必要な状況である。現地並びに我が国の感染状況を見極めつつ、適切な時期に訪問・調査を行えるよう、研究協力者であるHyun博士(韓国海洋科学技術院)・Sorensen博士と調整・計画を行う。感染状況しだいでは、韓国産サンプル調査は次年度へ延期する事も検討する。 抽出DNAはPCR・サンガーシーケンスにて、COI遺伝子並びにND2, ITS, 16S遺伝子の塩基配列を決定していく。
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