2021 Fiscal Year Research-status Report
マチン科ホウライカズラ属の環東シナ海地域における種分化と花形態の進化に関する研究
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21K06308
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
内貴 章世 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30393200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東馬 哲雄 (大井哲雄) 岡山理科大学, 自然フィールドワークセンター, 准教授 (10376527)
齊藤 由紀子 琉球大学, 教育学部, 准教授 (30626106)
天野 正晴 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 植物研究室, 主任研究員 (60897164)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 種分化 / 系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マチン科ホウライカズラ属(Gardneria)について、1)分子系統学的解析を踏まえた属内分類の再検討、2)花形態の進化傾向と繁殖様式の違いの検証、3)東シナ海辺縁島嶼における特異な地理的分化の評価と保全策の提言を行うことを目的としている。 本年度は、特にタイワンチトセカズラとリュウキュウホウライカズラが形態的・系統的に識別できる分類群であるかどうかを検討することを主目的として、東京大学、鹿児島大学、琉球大学の各標本館所蔵の標本および野外調査による形態観察、および日本本土、琉球列島および台湾の試料を用いた葉緑体DNAの非遺伝子領域4領域と核DNAのITS領域に基づく系統樹の構築を行った。 この結果、タイワンチトセカズラ(G. shimadae)とされていた台湾産と宮古島産の植物はそれぞれ異なる系統群に含まれ、台湾産はチトセカズラ(G. multiflora)、宮古島産は他の琉球列島のリュウキュウホウライカズラ(G.liukiuensis)と同じ系統であり、関東から沖縄本島にかけて分布するホウライカズラ(G. nutans)とは系統的に分化していることが明らかになった。 リュウキュウホウライカズラとされる植物の形態的な特徴(主に花と果実)を観察した結果、別分類群とする見解を支持する結果が得られた。ただし、花はこれまでホウライカズラに似ているとされてきたが、黄色い花弁や大きさからむしろチトセカズラの花に似ており、花糸がチトセカズラより僅かに長いこと、花序の分岐が少ないことで区別された。また、果実の大きさはチトセカズラとホウライカズラの中間的な大きさであり、1果実内の種子数は最大6個で、1または2個のチトセカズラより多く、4~6個程度のホウライカズラと同程度であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【野外調査と試料採取】野外調査によって分子系統解析に用いる試料については、一部の分布上重要な場所(対馬、福江島、渡名喜島)を除く国内の主要産地はほぼ網羅でき、台湾の試料は現地研究者の協力で得ることができた。形態観察に用いる花や果実は、本土産のものは採集できたが、琉球列島では開花・結実個体が野外ではほとんど見られず、おもに少数の栽培個体からの採集となった。 【外部形態比較】国内の主要ハーバリウム(植物標本館)において標本による外部形態観察を行うことができた。 【分子系統解析】核DNAのマーカーを用いた解析の一部以外はほぼ当初の予定通り行えた。 【繁殖様式】開花時期の訪花昆虫の種類と頻度の調査は行うことができなかったが、結実の状況はいくつかの場所で確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
国内のいくつかの未調査地(対馬、福江島、渡名喜島)および開花・結実確認や訪花昆虫の観察が必要な地域(神奈川県、岡山県、沖縄本島北部、宮古島など)での野外調査は可能な限り令和4年度に終えるようにし、台湾、韓国、中国等での調査は渡航が可能になり次第行うために、現地研究者と事前にやりとりをしておく。分子系統解析については、従来のサンガー法による系統樹の構築を引き続き進め、同時に、より解像度が高いと期待されるMIG-seq解析による系統樹作成も行う。
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Causes of Carryover |
主として新型コロナウイルス感染症の拡大により国内での野外調査の回数を当初の予定よりも減らさざるを得なかったため。 令和4年度は、前年度に行くことのできなかった国内各地での調査を終え、海外渡航が可能な状況になり次第、韓国、台湾、中国での調査を行う。
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