2021 Fiscal Year Research-status Report
日本海の生物相は本当に貧弱か 現生腹足類相と地史的要素との関連づけから
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21K06311
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 和範 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (70270410)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日本海 / 深海 / 生物相 / 固有種 / 地史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、激烈な地史的環境の変遷を経てきた日本海について、腹足類を例とした深海動物相の成り立ちを再考し、地球環境の変動と関連した生物相の成立過程を再検討することを目的としている。その最初のステップとして、初年度は日本海の現生深海腹足類相の詳しい種組成と分布様態を明らかにするために、蓄積された標本の詳しい検討を開始するとともに、調査航海に参加して新規標本を得ること、および海外の博物館に保存されている標本の検討を予定していた。しかし、下に述べる理由により幾つかの事業の実現が困難となったため、計画を変更し、主に蓄積された標本やデータの検討や解析、特に微小標本の精細な画像データの集積に注力した。 蓄積された標本の整理と分類学的な検討は予定通りに進捗している。また、出版された成果としては、1)先にロシア・ウラジオストクの海洋生物学研究所で記録していたデータに基づいて、日本海北部、ロシア極東沖深海帯のリソツボ科腹足類の詳細な再検討を行い、その成果を論文として公表した。また、2)漁撈によって日本海西部の漸深海帯から得られたエゾバイ科腹足類の1種について、上越教育大の天野和孝副学長と共同研究した結果、少なくとも5万年以上前の更新世の化石種Neptunea sakuraiであること明らかとなった。本種は千葉県銚子から記載された後、青森県と長野県から主に幼若個体しか記録のなかったもので、状態の良い成熟個体が多数、日本海西部の深海から発見された意義は大きく、これも論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度の大きな目的として、調査航海に参加して新規標本を得ること、および主にロシア・モスクワの海洋研究所に保存されている主に日本海の北部で採集された標本を検討することを予定していたが、いずれも新型コロナウイルス感染拡大の影響や、共同研究体制の変更、および国際情勢の変化により実現が不可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も主に蓄積された標本の検討を中心として研究を遂行する。そのための機材類の整備を進める。ロシアの調査船によって得られた標本の検討は事実上不可能となったが、研究期間中に状況が変ればこれも含めることを期待している。また、アメリカの国立自然史博物館に保存されている1900年代初頭に日本海の広いから採集された標本の検討は可能となりつつある。さらに、これまでの予備研究によってDNA解析に利用可能なサンプルもある程度蓄積されているため、これらを利用した研究へのエフォートを高める。これらに加えて、化石標本や、近隣海域の標本との比較・検討により当初の目的は達成できると考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた海外出張が実施できなかったこと、および調査航海への参加ができなかったことにより、予定よりも出費が大幅に少なかった。 次年度以降は一部の海外出張が可能となること、および一部計画を変更してDNA解析へのエフォートを高めること、および標本の詳しい検討に必要な機材を整備することにより、繰り越した予算を執行する予定である。
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Research Products
(3 results)