2021 Fiscal Year Research-status Report
ナガバノイシモチソウの花と捕虫葉で生じるポリネーターのコンフリクトと種分化の解明
Project/Area Number |
21K06315
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
渡邊 幹男 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30270995)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポリネーター / 食虫植物 / 種子形成 / 保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
食虫植物は貧栄養な環境に生育し,昆虫を餌として利用する。一方で,食虫植物は,昆虫によって送粉される。このため,送粉昆虫種が餌として利用されるとき,昆虫という資源をめぐる対立が生じる。日本産ナガバノイシモチソウ花序は,粘液を分泌する捕虫葉を,開花期と同時期に花のごく近傍の空中に展葉する。本研究は花色および花茎と捕虫葉の位置の違うナガバノイシモチソウの種分化について明らかにすることを目的としている。 その結果,食虫植物が捕獲する餌昆虫の種類は、まわりの植物の訪花昆虫の種類と重複していることから、食虫植物は花をもつ植物の近くに捕虫葉を持つことで、効果的に昆虫を捕まえることができる。さらに,このデータによって食虫植物の保全活動における方法も提案できると思われる。特に日本産ナガバノイシモチソウはその生育場所が激減しており保全方法の確立が望まれる種である。 また,モウセンゴケ属のシロバナナガバノイシモチソウとナガバノイシモチソウについて、ポリネーターや開花の有無による種子形成について調査した結果,シロバナナガバノイシモチソウ、ナガバノイシモチソウ共に、曇天時や気温が低いときなど、気象条件が昆虫の訪問に適さないときは開花せず,開かなかった花が生産する成熟種子数は、開いた花の2%以下であり、成熟種子数は統計学的に有意に少ないことがわかった。 2022年度は,ナガバノイシモチソウとポリネーターおよび捕獲される昆虫の関係を海外において調査を行う計画であるが,不可能な場合2023年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予定していた野外調査はコロナ禍のため,最適な時期に調査ができずにいる。国内における現地での生活史の調査にとどまっている。昨年度から行っている開花の有無による種子形成について調査した結果は,論文として発表ができたが,その際の浮かび上がった問題点の一つである中途半端に開花した場合の種子形成について調査を行ったが,調査回数が少なくデータとして不十分なものであった。しかし,アカバナナガバノイシモチソウにおいて,開花しない場合でも種子は形成されているがサイズは非常に小さく未熟な状態のままであることはわかった。関連した研究としては,トウカイコモウセンゴケでは開花しない場合でも種子形成することも明らかになった。しかし,観察した個体数が少ないため今後個体数を増やして調査する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も2021年度同様に日本産ナガバノイシモチソウは,赤花を愛知県豊明市で,白花を栃木県栃木市(渡良瀬遊水地),愛知県武豊町,宮崎県川南町等の現在確認している場所に加えて,過去に生育していた場所での再調査も行う予定である。特に中途半端に開花した場合における種子形成の有無と形成された種子の発芽実験を行う予定である。 本研究の目的である日本産のナガバノイシモチソウと台湾およびカンボジア産のDrosera indica Lにおける比較を行うことについて,海外調査が不可能な場合2023年度に延期する予定である。遺伝子解析においては海外調査も含めて材料のサンプリング終了後行う予定である。
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Causes of Carryover |
種子形成時期における見地調査が行えなかったため
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