2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K06318
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
高橋 一男 神奈川大学, 理学部, 教授 (10450199)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 翅干渉色 / ハイパースペクトル画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
小さな昆虫の持つ、透明で薄い翅は、暗い背景で観察すると非常に鮮やかな薄膜干渉による構造色を発色する事が知られており、WIPs(Wing Interference Patterns)と呼ばれている。2011年に幅広い昆虫での発色が初めて報告され、それまで見落とされてきた重要な表現型である可能性が示唆されてきた。しかし、このようなWIPs変異は、必ずしも人間の視覚で認識できるとは限らず、知覚の限界を超えた情報を活用する必要がある。WIPsの定量化法を確立し、その性差や種間差を記述する事によって、これまで未知であった微小昆虫におけるWIPsの変異やその生態学的意義を明らかにすることが可能となる。 令和4年度には、ショウジョウバエの幼虫期の餌条件がWIPsに与える影響について検討を行った。その結果、幼虫期の餌のタンパク質・炭水化物比やカロリー濃度によって、成虫になった際の翅のWIPsに有意な変化が生じることが明らかになった。また、ショウジョウバエで確立した解析方法を用いて、ショウジョウバエ以外の昆虫での予備的解析を行うために、訪花性昆虫においてWIPsを含む背景依存的な翅色変異の有無を評価し、頭・胸・腹部の体色パターンの類似性と翅色の類似性の関係性を調べた。神奈川大学湘南ひらつかキャンパス内のツツジの花壇に集まる訪花性昆虫を合計535個体採集した。個体数の特に多かったハチ目および、ハエ目のコガシラアブ科、ハナアブ科について、背景色(白と黒)依存的な翅色変異を測定した。その結果、多くの昆虫において、背景色依存的な翅色変異が検出され、その中にはWIPsと思われる発色も見られ、ショウジョウバエで確立されたWIPsの測定・解析方法が、広い分類群の昆虫に適用可能な可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WIPsの撮影条件や解析条件の検討が順調に終了し、予定していた撮影、解析を進めている。また、研究成果をもとにした学術論文の作成も順次進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度中に、引き続き予定の解析を進める。撮影するショウジョウバエ種数を増やしつつ、研究が完了次第、順次学術論文を作成する。
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Causes of Carryover |
令和4年度には大学のキャンパス移転があったため、ショウジョウバエの飼育や実験が十分に行えない期間があった。その期間は、論文の執筆や、データ解析を行ったため、予定よりも支出が少なくなった。令和5年度には令和4年度に行えなかった分の飼育や実験を順次行っていく予定である。
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