2022 Fiscal Year Research-status Report
複数の小規模・大規模交雑がもたらすイモリの網状進化とモザイク的な集団構造の検証
Project/Area Number |
21K06321
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
富永 篤 琉球大学, 教育学部, 教授 (60452968)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松波 雅俊 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60632635)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 集団遺伝 / SNP解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は関東地方と東北地域での採集を行った。これらの野外調査でRNA-seq解析に必要な標本サンプルの一部を収集した。昨年度、DNAを抽出して外注したddRAD-seqのデータを解析した結果、124個体,約1.6万SNPsのデータが得られた.これらのデータを主成分分析およびAdmixture解析の結果,アカハライモリには北日本,中部日本,西日本の3群がみられ,各群内にも複数のサブグループが見られることが明らかとなった.既知の交雑帯の他に,新たに静岡県河津町と兵庫県淡路市も交雑集団であることが明らかになった.4集団検定(f4 test)の結果,兵庫県福崎以西の中部日本群は西日本群から,愛知県知多半島以東の中部日本群は北日本群からの遺伝子浸透が相対的に多いことが判明し,中部日本群と他群との間の過去の交雑が示唆された.ほぼすべての個体についてmtDNAの配列も決定してmtDNAでの区分を調査した結果、西日本系統のmtDNAをもつ和歌山集団は,核ゲノムでは中部日本群に含まれ,核-mtDNA間に不一致が見られた。このことから、和歌山集団は、交雑由来の集団であり、核ゲノムのみが中部日本群になり、mtDNAは西日本系統のものをいまだに保持していることが明らかになった。関西以西では、東から西方向へ交雑帯が移動したことが先行研究でも示唆されており、過去の交雑帯の移動により核ゲノムの大部分が中部日本群のものに置き換わり、西日本群の痕跡として西日本系統のmtDNAをもつものと考えられた.これらの結果から,複数の交雑帯を介した遺伝子浸透が,中部日本群の多様なサブグループの形成に影響を与えたことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ddRAD-seq解析は十分に進展し、新たな知見が多く得られた。これらについては論文発表のための準備を進めている。RNA-seqのためのサンプルの収集を進めており、RNA抽出を一部の個体で実施した。ただし、2022年度は解析までは実施できなかった。最終年度には、RNA-seq解析を交雑帯を介して、特定の遺伝子の遺伝子浸透が生じているか調査したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqのために追加のサンプリングを行う。次年度は長野県北部や中国地方でのサンプリングを予定している。また、RNA抽出を進めて、RNA-seqの外注する予定である。
|
Causes of Carryover |
実施を予定しているRNA-seqの外注まで至らなかったために次年度使用額が生じた。これらの予算は、次年度のRNA-seq解析の外注に主に充てる予定である。
|
Research Products
(7 results)