2022 Fiscal Year Research-status Report
マメ科ハギ属の在来・外来集団の識別と分類学的再検討へのMIG-seq法の適用
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21K06322
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
根本 智行 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (50228293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 歩 東北大学, 農学研究科, 助教 (90868754) [Withdrawn]
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 教授 (60282315)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マメ科 / ハギ属 / ミヤギノハギ / ビッチュウヤマハギ / ケハギ / MIG-seq解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.野外調査による標本およびDNA解析試料の収集:研究代表者が調査および収集を行った。まず、9月7日-14日に、ミヤギノハギ(広義)および近縁種の集団の試料および標本の収集を目的に、試料が全く入手できていない四国(香川県、徳島県、高知県)で現地調査を行った。次に、9月17、18日にミヤギノハギ(広義)の亜種であるケハギの分布北限である山形県において標本および試料の収集を行った。さらに、令和3年度に時期が早すぎて花期の標本と同時にDNA解析試料を採取できなかったサツマハギの収集を目的に、10月6日~14日に鹿児島県薩摩川内市(甑島)および南さつま市(大浦町・笠沙町)で調査を行った。 2. MIG-seq解析:上記の調査で収集したハギ属271個体に、以前アメリカ合衆国や韓国で収集した17個体の試料も加えて全DNAを抽出した後、共同研究者がMIG-seq解析を行っている。すでに解析結果の得られている東北・北陸・東海・近畿・中国・九州地方の試料の系統解析を行い、得られた系統樹と標本との照合を行い、以下のことが判明した。 (1)ミヤギノハギ(広義)の亜種であるタイワンハギ、ケハギ、ミヤギノハギ、ビッチュウヤマハギはそれぞれ系統的にまとまる。また、系統樹はタイワンハギ、ビッチュウヤマハギ、ケハギは別種とすべきことを示唆した。また、ミヤギノハギは、他の栽培品種とともに、ビッチュウヤマハギおよびケハギと系統的なネットワークを形成しており両種の雑種起源である可能性が示唆された。 (2)新潟県および京都府の各1地点で、ビッチュウヤマハギに形態が類似し系統的にもまとまり、かつ、ヤマハギやマルバハギと系統的につながる集団が見つかった。しかし、葉形がビッチュウヤマハギやヤマハギ、マルバハギとは異なり、国内に該当する既知の分類群や集団が見つからず、中国などの国外から導入された集団である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度に予定していた調査および試料・標本の入手は概ね達成できた。ただし、ハギ属の花期(9月、10月)に合わせて試料・標本の収集を行っていることやサンプル数が多いことから、その後のDNA抽出が12月まで及んでしまった。このため、MIG-seq解析のスタートが年度末にずれ込み、解析はまだすべて終了していない。なお、この解析には、少数ではあるが以前に収集した韓国や北アメリカのハギ属の収蔵標本やシリカゲル乾燥試料も加え、ハギ属の包括的な系統樹の構築を目指している。 中国産の標本および試料の入手については、中国科学院植物研究所(北京)の朱相雲教授に問い合わせを行ったが、海外調査への出張直前であったため回答が延期され、その後返答が得られず具体的な進展はなかった。 令和4年度の試料のMIG-seq解析はまだ継続中であるが、これまでに得られたMIG-seq解析結果と標本を用いた形態との比較はおおよそ検討することができ、「研究実績の概要」でとりあげた成果について、「MIG-seq法を用いたマメ科ハギ属の系統解析」と題して日本植物分類学会第22回大会(2023年3月1日)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の主目的であったミヤギノハギ(広義)の亜種ビッチュウヤマハギについては、国内のほぼ全分布域からの試料・標本を入手することができた。(1)亜種ケハギについては、分布の南限でビッチュウヤマハギの分布北限と近接する富山・石川・福井・岐阜県の試料・標本が得られていないことから、これらの地域のいずれかで9月に試料・標本を収集し、MIG-seq解析に追加する。また、ケハギの種子に他の亜種と異なる特徴が見つかったので、解剖学的な知見を追加する。次に、(2)亜種サツマハギについては、MIG-seq解析で予想に反する系統関係が示唆されたため、令和4年度に収集した多数の標本を用いた形態解析を行う。以前から種間交雑が指摘されていることも鑑み、花粉稔性などを調べ隣接するキハギやマルバハギとの交雑の可能性を含め、分類群としての識別が可能なのか検討する。さらに、(3)今回識別されたビッチュウヤマハギに類似する導入・帰化の可能性がある集団について、その特徴的な葉形を指標に、「中国数字植物標本館(Chinese Visual Herbarium)」の標本画像データベースとの照合を行うことで類似植物の存在や分布地を探索する。この結果をもとに、標本・試料の入手の可能性について、中国科学院植物研究所(北京)の朱相雲教授と具体的に相談・検討する。 本研究では、当初、ミヤギノハギ(広義)の中国集団も加えた系統解析を目的としていていた。しかし、多数の標本・試料の入手は容易ではない。そこで、国内で入手できる種を網羅したハギ属のより包括的な系統解析をめざしたい。このため、在来種でまだ入手ができていない希少種クロバナキハギの標本・試料を入手し解析に加えるため、花期の8月に国内産地(熊本県、愛知県)で現地調査を行う。 今年度は最終年度であるため、以上の調査・解析・検討に加え、成果取りまとめと論文執筆に努める。
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Causes of Carryover |
本研究ではDNA抽出キットを使用するが、過年度に購入した買い置きが余分にあったため、約1キット分の予算が残った。次年度の消耗品購入費として使用予定である。
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