2022 Fiscal Year Research-status Report
コクシジウム類の多様性から探る宿主の特異性と共種分化の過程
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21K06323
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
常盤 俊大 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50757755)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コクシジウム / カエル / 天然記念物 / 絶滅危惧種 / Eimeria / Hyaloklossia / 原虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
コクシジウム類はアピコンプレックス門アイメリア亜目に属する偏性細胞内寄生原虫である。本研究課題では、様々な動物に寄生する“新奇”のコクシジウムを探索し、種の多様性を評価し、宿主適応の過程を探る。各種動物より得た虫体を材料として、形態および遺伝子情報を入手し、地域、宿主、寄生部位および体内ステージの情報と併せて包括的な分類学的位置を評価し、また、宿主の系統と比較することで共種分化の過程を探ることを目的とする。本年度の主な成果は以下の通りである。 (1)前年度に茨城県のトウキョウダルマガエルより検出し種記載したHyaloklossia kasumiensisについて、本邦の無尾類における感染状況を調べた。トノサマガエル23匹、ニホンアカガエル8匹、ツチガエル3匹、ヌマガエル13匹、カジカガエル9匹の腎臓を精査したところ、滋賀県由来トノサマガエルの11匹が陽性であった。他のカエル種からは検出されなかった。このほか、展示施設で飼育されていた兵庫県由来のナゴヤダルマガエルが死亡し病理検査を実施したところ、検査した4匹のうち2匹の腎臓に、感染を認めた。これらのことからトノサマガエルおよびナゴヤダルマガエルを新しい宿主として報告した。同原虫は、本邦に分布する全てのトノサマガエル属を終宿主とする一般的なコクシジウム類でことが明らかとなった。 (2)アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島のみに生息する特別天然記念物である。アマミノクロウサギの救護個体および現地の糞便よりコクシジウムを検出した。形態学的特徴より3種の未記載種と判断し、Eimeria属の新種として記載した。これらは、形態学的に他のウサギ類の寄生種と類似しており、また、分子系統樹解析でもウサギ目から検出されるEimeria属との単系統性が示されたことからアマミノクロウサギとともに共種分化した原虫種であると推察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、サルコシスティス科における亜科レベルの再編を行い、また、希少種であり生きた化石とも呼ばれるアマミノクロウサギのコクシジウムの発見と種記載を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、野生哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類および魚類等の、これまで注目されてこなかった動物種に寄生するコクシジウム類の探索と解析を行い、多様性の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために渡航を伴う調査を延期し、また、論文掲載費として確保していたが年度内に出版手続きが完了しなかったために、次年度使用額が生じた。寄生虫調査および論文掲載費に使用する予定である。
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