2023 Fiscal Year Annual Research Report
サルはにおいで毒キノコを判別するのか:忌避を誘導する揮発性物質の特定
Project/Area Number |
21K06332
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 晶子 京都大学, 野生動物研究センター, 特任研究員 (10646665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都野 展子 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (60295102)
宮部 貴子 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 助教 (10437288)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニホンザル / 菌食 / 忌避行動 / キノコ / 採食生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、極めて多様なキノコを食べる屋久島のニホンザルが毒キノコを忌避しており、その背景には嗅覚情報が関与している可能性が示された。最終年度である本年度も、サルが忌避するキノコの揮発性物質の特定するため、2023年8月から9月にかけて屋久島西部林道域にて野外調査を実施し、菌食行動データの収集ならびに試料採取を実施した。過年度の実験結果を踏まえ、乾燥器内で揮発性物質の捕集を試みたところ良好な結果が得られた。屋久島で得た試料の遺伝子解析ならびにGC/MS分析は金沢大学で実施した。
京都大学ヒト行動進化研究センターで飼育されるニホンザルを用いたバイオアッセイも実施した。野生のサルは、有毒種を多く含むことで知られるテングタケ類のキノコに対して検査行動(におい確認する、齧って吐き出すなど)を示す頻度が高い。テングタケ類のにおいが捕食者に対する警告臭として機能し得るのか、サルが好む果物にテングタケ類のにおいを吸着させてサルが忌避行動を示すかどうか検証した。GC/MS解析の結果に基づき、一般的なキノコのにおいとして1-オクテン-3-オール、テングタケ類のにおいとして2-メチルフランを用いた。1-オクテン-オールを用いた給餌実験では半数近くのサルが検査行動をとり、2-メチルフランを用いた実験ではほぼすべてのサルがより顕著な反応を示した。野生個体も高い頻度でテングタケ類のキノコを検査・忌避することを鑑みると、2-メチルフランが警告臭として機能している蓋然性は高く、本研究成果により、哺乳類と菌類の相互作用ならびに毒キノコのにおいの進化生態学的意義をの解明につながる知見が得られた。
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Research Products
(2 results)