2021 Fiscal Year Research-status Report
Reproductive isolation and diversification with homoploid speciation
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21K06334
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三村 真紀子 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (60451689)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 種分化 / 交雑 |
Outline of Annual Research Achievements |
倍数化を伴わない交雑種分化(Homoploid Hybrid Speciation)は、親種との生殖隔離が成立しにくいと考えられてきたため、種分化における重要性が今でも議論されている。しかし、同じ倍数体でも、新規の表現型による生態学的隔離やそれによって形成される地理的隔離に加え、遺伝的不和合による内因的隔離など様々なフェーズで雑種と親種との間に生殖隔離は成立しうる。交雑は集団内に膨大な多様性を作り出し、迅速な適応進化をも可能にする。本研究では、西日本で多様化しているイカリソウ属を用いて、倍数化を伴わない交雑種分化における生殖隔離機構を明らかにするとともに、交雑種からさらなる分化が引き起こされる種分化プロセスを明らかにすることを目的としている。 本年度は、サンプルの収集、標本データベースの整理、形態的特性、分布域の気象情報、種子発芽要求性、種間交配親和性検証のための交配実験、NGSによる分子系統樹の作成を行った。分子系統樹からは、雑種起源とされる種が推定親種とは独立した単系統を示した。ただし、ネットワーク解析では、推定親種と多型の共有が高く、雑種起源説を支持した。形態的多様性の検証では、葉茎の形態において種を代表するタイプがあるものの、種内多型は高かった。交雑起源種とされるものには特に高い種内多型がみられた。イカリソウ属は属の分岐そのものも比較的若く、種分化プロセスにおいて形質的な固定がされていないことが明らかとなった。しかし、分子系統樹ではいずれの種も単系統を示す傾向にあり、なんらかの生殖隔離機構が作用していることが明らかとなった。種子発芽特性についても、分布域の年間平均気温に応じた低温要求性を示す傾向にあり、種分化に伴う生態学的分化と交雑の関わりについてさらに検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NGSによる多型検出を行い、交雑の背景を考察できる系統樹を作成した。また、交配実験や形態調査から内因的生殖隔離の程度や形態的な分化に関する解析を進めることができた。さらに、国内に自生するイカリソウ属の複数地点における収集がほぼ完了し、生態学的隔離を検証する予備実験を行っている。順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、収集したサンプルから、実生のストレス耐性実験による生態学的隔離の検証、分子配列データから交雑の履歴とその遺伝子領域の特定などを行う。ストレス耐性実験では、沿岸部に進出した種とその近縁種(推定親種を含む)を対象とした塩耐性の検証、異なる地質に進出した種とその近縁種(推定親種を含む)を対象した環境ストレス耐性の実験を行う。すでに予備実験によって条件の検討を進めている。ストレス耐性実験を行った個体については、遺伝子発現解析の準備を行う。また地理的な分布変遷の再現のための変異データ収集と生態学的ニッチモデリングを行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は、開花期が早い地域やコロナ禍の情勢が安定せず、2022年初春の開花期に収集調査をもちこした部分があったため、旅費相当分が次年度の使用となった。
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