2023 Fiscal Year Annual Research Report
Why do male sperm whales make groups?
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21K06350
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
天野 雅男 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50270905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 伸 宮崎大学, 教育学部, 教授 (40423561)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会生態 / ハクジラ類 / 社会構造 / マッコウクジラ |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年4、6、7月に長崎県五島列島南方海域でマッコウクジラの調査を行った。これらの調査で16個体が個体識別され、このうち2個体が新規識別個体であった。10個体は2020年以降に確認された個体であり、この数年間にこの海域を主たる初夏の採餌域として利用するようになったものと考えられる。7年以上継続的に識別され、昨年来遊がなかった2個体の再来遊が4月に確認された。この2個体は6、7月には識別されず、新たな採餌海域への回遊の途上に立ち寄った可能性がある。 2013年以降に得られた個体識別記録をもとに社会分析を行った。1時間以内に識別された個体は互いに同伴しているとみなし、個体対ごとに半加重同伴指数を算出した。5日以上識別された個体の平均同伴指数の平均値は0.28であった。また、ある時点で個体XとYが同伴していた時に、任意の遅延時間後にXの同伴者が再びYである確率である標準化遅延同伴率を算出したところ、その値は時間経過とともに低下したが、調査期間を通して帰無水準よりも高い値を示した。標準化遅延同伴率へのモデル当てはめにより、若オスの同伴関係には数十年の長期的な関係と100日程度の短期的な関係が含まれていることが示された。これらの結果は、若いオスのマッコウクジラには数十年に渡る長期的な個体間関係が存在することを示唆している。 46個体について、ミトコンドリアDNA・コントロール領域に基づく母系解析を行った。その結果、13個のハプロタイプが検出された。全ての調査年度において複数の母系が検出された。また年により出現するハプロタイプは異なっていた。これらのことは、オスのマッコウクジラの集団は異なるメスのユニットを出自とする個体が集合して作られており、その母系ユニットも固定されたものではない可能性を示唆している。
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