2021 Fiscal Year Research-status Report
弱い分散による協力行動の進化:寄生バチの性比調節を対象にした実証と理論の発展
Project/Area Number |
21K06353
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
安部 淳 明治学院大学, 教養教育センター, 研究員 (70570076)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 性比 / 分散 / 協力 / 血縁選択 / 寄生バチ / Melittobia |
Outline of Annual Research Achievements |
Abe et al. (2021, PNAS) では、寄生バチMelittobia australicaの雌が、自身の分散経験に応じて性比を調節して産卵することを明らかにした。しかし、理論的予測と野外で実測された性比が定性的には一致するものの、定量的には一致しないなどの問題があり、今後は野外環境における詳細な個体群構造を明らかにしていく必要がある。 そこで、今年度は同属のM. sosuiについて、個体群構造を解析するためのマイクロサテライトDNAマーカーを開発した。本種は越冬期を除き年間を通して比較的高い確率で採集することができるため、個体群構造の解析に適している。 次世代シーケンサーを用いて得られたDNA配列から、112遺伝子座のマイクロサテライトについてプライマーを設計した。PCR反応を試みたところ、その内102の遺伝子座で増幅が確認された。増幅が確認されたプライマーを八重山個体群からの36個体、神奈川個体群からの9個体群について解析したところ、65遺伝子座で多型が確認された。その内、八重山個体群内では16遺伝子座、神奈川個体群内では18遺伝子座で多型が認められた。八重山個体群は離島であるためか、多型があっても相対遺伝子数が少なく、さらに一部の相対遺伝子に分布が偏る傾向が見られた。それでも、その内のいくつかの遺伝子座では相対遺伝子がばらけて存在するものもあり、今後はそれらを使って詳細な個体群構造の解析を行えると見込まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、M. ausutralicaに加えて、M. sosuiについてもマイクロサテライトDNAマーカーを開発することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発したM. sosui用のマイクロサテライトDNAを用いて、今後は南西諸島でも頻繁に野外調査を行い、年間を通した複数世代に渡る個体群構造の解析を行う。さらに、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))の課題とも連携し、海外に生息する別種のMelittobia個体群も含めて調査を行う。Melittobiaの複数種と複数個体群を対象に、個体の分散経験に伴う個体群構造と野外環境において進化した性比の関係を総合的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で野外調査が行えず、交付期間を延長したため。
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