2021 Fiscal Year Research-status Report
Impacts of reduction of primary production on ecosystems in mass extinction events
Project/Area Number |
21K06355
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
吉田 勝彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主幹研究員 (70332244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生態系モデル / 物質循環 / 進化 / 再現能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2種類の生態系進化モデルを用いる計画となっている。その一つはYoshida (2008)で構築した比較的構造が単純なモデル(物質循環過程を単純な形で表現した数理モデル)であるが、それに加えて、Yoshida et al. (2019)で開発した生態系モデル(生態系の物質循環を精密に再現する数理モデル)を基盤として、生物の進化過程を導入し、生態系の物質循環と進化過程を同時に再現できる“生態系物質循環進化モデル”を新たに完成させた。このモデルのパフォーマンス、つまり実際の生態系の挙動を再現する能力をチェックするため、比較可能なデータが得られている実際の生態系を再現するシミュレーションを行った。その結果、生態系が撹乱を受ける前の原始的な状態を効率良く再現できた。また、その生態系に撹乱が加わって多様性と生物量が減少した状態と、そこから撹乱要因を取り除いた後の回復過程も精度良く再現できた。ある時点でのスナップショット的な状態を再現するだけにとどまらず、それらの間の連続的な変化を精度良く再現できたことは、このモデルが、本研究の目的、つまり一次生産量の停止という大規模な撹乱を受けた際の生態系の挙動を明らかにすることを達成できる十分な性能を有していることを明確に示している。このモデルは、今後本研究の目的のみにとどまらず、様々な生態系を対象とした生物進化に関する研究や生態系の変化の予測などにも幅広く応用していくことが可能であると考えられる。 これら2種類の生態系進化モデルに対して、一次生産量が停止した時に生じる飢餓状態に対する生物の反応、つまり一定期間経過後に餓死することによる集団の消滅、個体の死亡率の上昇、体力が低下することによる捕食努力の減少という3つのプロセスを導入し、一次生産量の停止が生態系に与える影響を解析するための数値シミュレーションを行うプログラムを作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、二つ目の新しい進化モデル(生態系物質循環進化モデル)が完成した。このモデルを用いて、実際に存在する生態系を再現するテストを行った結果、私の期待よりも高い精度で対象の生態系を再現することができた。一時点でのスナップショットを再現するだけでなく、撹乱を受けた際の時間軸に沿った変化も再現することができたことから、一次生産量停止という撹乱に対する生態系の反応を解析する本研究を行う上で、大変信頼性の高い基盤を整備でき、今後の順調な進捗を担保できたと考えられる。一次生産量停止のシミュレーションの準備も概ね順調であり、予定通り2年目には数値シミュレーションを本格的に開始できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最初に一次生産量停止のシミュレーションを行うためのプログラムを完成させる。具体的には、物質循環過程を単純な形で表現したYoshida (2008)のモデルと、初年度に完成させた生態系物質循環進化モデルを基盤とし、これら2種類の生態系進化モデルに、一次生産量が停止した時に生じる飢餓状態に対する生物の反応、つまり一定期間経過後に餓死することによる集団の消滅、個体の死亡率の上昇、体力が低下することによる捕食努力の減少という3つのプロセスを導入したコンピュータシミュレーションを行うプログラムを、年度前半を目処に完成させる。これらの二つの生態系モデルと3つのプロセスのどれを採用するか、によって12通りの組み合わせが考えられるが、それぞれの組み合わせに基づいた数値シミュレーションを行い、一次生産量の停止が生態系に与える影響を解析するという目的に適した組み合わせを探索する。
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